米韓合同演習、中朝の挑発抑止に不可欠だ


 米韓両軍は韓半島有事に備えた定例の合同演習を韓国で開始した。北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し、その脅威が高まっていることに加え、最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、正男氏の殺害事件に国家ぐるみで関わった疑いが濃厚になるなど恐怖政治の実態が改めて浮き彫りになっている。こうした時期に合同演習を行い、武力挑発を許さない姿勢を示すことは極めて重要だ。

トランプ政権発足後初

 演習は野外機動訓練「フォール・イーグル」と米軍増援や指揮系統をシミュレーションする「キー・リゾルブ」に分かれ、来月末まで実施される。米原子力空母「カール・ビンソン」や最新鋭ステルス戦闘機「F35」も参加し、両軍計約31万7000人が参加した昨年を上回る過去最大規模だという。

 特に今回はトランプ米政権発足後初めての演習であるため関心を集めている。マティス米国防長官は韓国の韓民求国防相との電話協議で「米国や同盟国へのいかなる攻撃も撃退される」と述べた。北朝鮮を牽制(けんせい)する断固たるメッセージである。

 北朝鮮は演習に反発し、軍総参謀部は「演習が中止されない限り、核武力を中心とする自衛的国防力と先制攻撃能力を強化し続ける」と主張した。周辺国に言い掛かりを付け、核・ミサイル路線を正当化しているにすぎない。

 正男氏殺害事件をきっかけに国際社会では北朝鮮への不信感が急速に広がっている。米韓が対北抑止力をアピールすれば、北朝鮮をさらに孤立させる効果も期待できる。

 今回の演習は中国の脅威に対抗する意味でも重要だ。北朝鮮の弾道ミサイル防衛のため韓国への年内配備が決まった新型地対空迎撃ミサイルのTHAAD(高高度防衛ミサイル)に中国が露骨に反対しているためだ。

 中国外務省はTHAAD配備について「国益擁護に必要な措置を取る」と述べ、中国各紙は社説で韓国製品の輸入制限や韓流イベントの開催中止を呼び掛けた。配備のための敷地を提供した財閥企業ロッテに対する各種の嫌がらせも発覚している。

 中国は反対の理由に、THAADのレーダーが自国内の軍事施設まで監視対象にする恐れがあることなどを挙げている。しかし、米韓両国はあくまで対北抑止用であることを強調してきた。また逆に中国の方こそ韓国軍や在韓米軍の施設をレーダーで監視しているとも言われる。反対する本当の理由は、THAAD配備で米韓同盟が強化されることとの見方が少なくない。

 北朝鮮と共に、南シナ海などで力による現状変更を試みる中国を牽制するためにも米韓両国の連携は不可欠である。

価値帯びる日韓軍事協定

 さらに重要なことは、中朝両国の脅威に対抗して挑発を封じるために日米韓3カ国の協力体制を揺るぎないものにすることだ。その意味で、昨年締結された日韓間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は極めて大きな価値を帯びてこよう。

 朴槿恵大統領の弾劾裁判などで韓国情勢は流動的だが、こういう時こそ結束を確認する必要がある。