政府は、訪日外国人数の倍増を目標に、新たな…


 政府は、訪日外国人数の倍増を目標に、新たな観光地開拓を呼び掛けるが、そう簡単ではないようだ。日本旅行業協会の田川博己会長(JTB会長)も「旅行会社の企画力が落ちた」ことを認めている。

 そのJTBの2017年の訪日客向けツアー企画を見ると、東京や富士山、京都などの「ゴールデンルート」や北海道、東北、中国、九州の周遊コースなど。果たして訪日客の長期滞在につなげられるかどうか。

 サンデー世界日報1月15日号・日下一彦金沢支局長の記事によると、能登半島の先端、奥能登の山あいの集落「春蘭の里」へ、この5年間で900人余が訪れ、人気スポットになっている。今春、イスラエルから30人余の観光客が訪問予定だ。

 日本の原風景が残る田舎暮らし体験や住民との素朴な交流が話題を呼び、その魅力が口コミで伝わった。京都市の旅行代理店が始めたツアー企画がきっかけだが、客受け入れの主役はあくまで地元の人たちだ。

 「地元産の食材にこだわり、日中は里山で山菜を採り、それを天ぷらにして味わってもらう」「夕食には輪島塗の膳にワラビやゼンマイの煮物」「箸も手作り」という。

 故木村尚三郎東大名誉教授は「ふるさと再生に必要なことは、まずそこに住んでいる人たちが自分の町に誇りを持ち、自信をつけることだ」と話していたが、まさに春蘭の里の人たちに当てはまる。観光客誘致には「ふるさと再生」の意気込みが要る。