北方領土の日、4島返還が日露協力の前提だ


 37回目の「北方領土の日」を迎えた。第2次大戦末期に旧ソ連は、択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島を不法に占拠し、戦後70年以上が経過した現在もその状態が続いている。安倍晋三首相はきょう開催の北方領土返還要求全国大会でロシアに改めて抗議するとともに、4島一括返還に向けた強い決意を明確にすべきだ。

強硬姿勢のプーチン氏

 ソ連は1945年2月のヤルタ秘密会談で、米国から対日参戦を求められた。スターリンは参戦の代償として日本領の南樺太と千島列島を要求し、米国はこれを受け入れた。そうとは知らないわが国は、連合国との講和を目指し、ソ連にその仲介を要請していた。

 ソ連は同年4月、当時有効だった日ソ中立条約の1年後の破棄を通告した。だがわが国は、仲介を要請し続けた。そしてソ連は8月、日本に対し一方的に宣戦布告した。圧倒的な兵力を投入し、日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた15日以降も侵攻を続けた。

 ソ連を信じたわが国が愚かだったことは言うまでもない。しかし、わが国の窮乏を知りながら背後で米英と密約を結び、日ソ中立条約に違反して対日参戦し、多くの日本人を殺害し火事場泥棒の如(ごと)く領土を奪ったことは、どんな理屈を持ち出そうと正当化することはできない。

 そればかりかソ連は、旧日本軍人や民間人ら約60万人をシベリアに抑留し、飢餓や酷寒の中での過酷な強制労働に従事させて約6万人を死に至らしめたのだ。国際法違反の蛮行であり、到底許されるものではない。

 ただし、われわれは過去の歴史に必要以上にとらわれようとは思わない。未来を見詰め、日本の隣国であるロシアとの友好関係を築いていきたいと願っている。そのためには、ロシア側がわが国と同様な考えを持ち、未来に向けた誠実な対応を行うことが不可欠である。

 安倍首相は昨年12月、来日したロシアのプーチン大統領と会談し、領土問題を含む平和条約締結に向け、日露双方の法的立場を害さない形で、北方四島での共同経済活動に関する協議を始めることで合意した。両首脳が発表したプレス向け声明は、協議開始が「平和条約締結に向けて重要な一歩になり得るとの相互理解に達した」と明記した。

 しかしプーチン氏は訪日前、日本メディアのインタビューで「ロシアには領土問題はない」と、それまでと変わらない強硬姿勢を露(あら)わにした。首脳会談後も、平和条約締結後の色丹、歯舞2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言に触れ、「どのような形で引き渡すか明確には定義されていない」と語り、日本側を牽制(けんせい)した。

「法と正義」で解決を

 北方四島は日本固有の領土であり、ロシアが不法占拠を正当化することはできない。日本に返還されない限り、ロシアとの本格的な経済協力を進めることは困難だ。

 日露首脳は1993年、東京宣言で「4島の帰属を法と正義の原則で解決する」ことで合意した。ロシアには「法と正義の原則」に基づいた対応を強く要求する。