「パナマ文書」でG20に焦点ぼけの構造改革一般論になった各紙社説

◆日経も税逃れに重点

 米ワシントンで開かれていた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した。

 開幕前、不確実性が増し低成長にあえぐ世界経済をいかに立て直すかがG20会議の大きな焦点だったが、突如、浮上した「パナマ文書」問題により、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れへの対策に、重点がすっかり移ってしまった感じである。

 各紙の論評は、日経までもが17日付で「G20は課税逃れの対策を着実に進めよ」と題する社説を掲げ、ホットな話題に合わせた形である。

 確かにこの問題は、各国の首脳が友人や親族をも使い、タックスヘイブンを利用して、違法ではないにしても課税逃れしていたことが明るみになり、国際的に批判が高まった。政治不信、納税不信につながりかねず、アイスランドでは首相が辞任に追い込まれてもいる。G20が国際協調で課税逃れ対策の強化を盛り込んだことは、それなりに意義のあることではある。

 だが、パナマ文書問題はホットな問題ではあるが、主要な議題はあくまで、世界経済の成長促進策だったはずである。

 これについて、日経社説は後半での、見出しにも取らない扱いになった。同紙が、「すべての政策手段を用いる」との2月の合意を再確認するにとどめた、と指摘するほどの評価では無理もないのかもしれない。

 同紙は「金融政策のみでは均衡ある成長につながらない」としたG20声明には「正しい」としながらも、「問われているのは各国・地域の具体策だ」と強調。そうした具体策が声明にはなかったからである。

◆構造改革求めた毎日

 産経社説(17日付)も、そうした肝心な中身がなかったからか、ほとんどを「税逃れ防ぐ枠組み広げよ」との見出しに沿った内容に費やしている。世界経済については、最後のわずか9行で、「各国の実情に応じて金融政策や財政政策を効果的に実施するのはもちろん、持続的な成長に向けた構造改革の手も緩めてはならない」と指摘するにとどまった。

 読売18日付社説「政策協調の実効性が問われる」は、直接的には「世界経済の安定へ」向けての努力だが、「課税の抜け道を塞ぐ国際協力体制を構築しよう」とすることにも当てはまる、思慮の尽くされた見出しである。

 同紙社説は、課税逃れ問題は4分の1にとどめ、多くの部分を世界経済の問題に割いて、各国が「政策手段を総動員する決意を改めて示した」と評価しながらも、「ただ、各国それぞれの事情があり、G20は一枚岩ではない」状況を明らかにしている。日経が強調した「各国・地域の具体策」を示したくても、そうできなかった背景である。

 毎日社説はG20会議が開かれる前の14日付だったこともあり、課題を挙げて「連携し減速に歯止めを」との見出しにまとめている。この求めに対し、G20の答えは日経の指摘の通り、具体策は出ず、総論にとどまってしまったということ。

 ただ、毎日は「先進国にも新興国にも、単独でけん引役になれそうな国は見当たらない。いかにして長期停滞入りを回避するかが問われている」という問題意識を持ちながら、従来型の景気刺激策は「成長を持続させられない」と否定し、「経済の活力を引き出せる構造改革を地道に進めねばならない」「将来への不安を取り除き、自信につなげることが肝心だ」と説く。

◆短期的な対策も重要

 これは短期的な対策はともかく、中長期的な構造改革で「減速に歯止めを」ということだが、容易ではないだろう。

 同紙は従来型の景気刺激策を否定するが、それが成長を持続させられないように見えるのは、直近の例では、14年4月の消費増税のように、デフレ脱却の途上で景気拡大の勢いを止めてしまったからである。同紙も賛成した財務省の近視眼的財政再建論からの増税策によってである。

 朝日17日付社説「構造問題への対応こそ」も、毎日と同様に、「G20は目の前の対策よりも、長期的、構造的な課題へと取り組みの重点を移していくべきだろう」と説く。

 確かに、長期的、構造的な対策も重要であり否定はしないが、それと同じくらい、目の前の短期的な対策も重要であり、無視していいわけではない。

(床井明男)