新年の日本経済、成長力どこまで回復できるか
新年の日本経済がスタートした。「アベノミクス」も今年で4年目。来年4月に予定する消費税再増税を控え、どこまで景気が回復し、成長力を高められるか正念場の年である。
2015年度補正予算や16年度予算などの景気刺激効果は乏しく、企業の賃上げや設備投資に期待がかかるが、海外経済に不透明な要素も多く楽観は禁物。状況によっては秋ごろに再増税見直しか大型16年度補正の検討が必要になってこよう。
来年4月に消費再増税
新年の日本経済の特徴は何と言っても、来年4月に予定される消費税率10%への引き上げの前年ということである。
昨年末に、再増税と同時に導入する軽減税率の対象を、酒類と外食を除く飲食料品とすることが与党の16年度税制改正大綱で決まった。特に低所得者層の増税による痛税感を緩和するためだが、それでも4兆円強のデフレインパクトがあり、経済へのダメージは小さくない。
経済が順調に拡大しているのであればともかく、前回の増税(14年4月)からまだ日が浅く、その影響が依然として残っている状況での再増税である。
景気の現状は、相変わらず回復力に強さがない。昨年7~9月期の実質GDP(国内総生産)は、好調な企業収益を背景に設備投資がプラスに転じたことで2期連続のマイナス成長は避けられたが、12月日銀短観では景気の先行きに、業種や規模を問わず全ての企業が慎重な見方を示した。中国など新興国経済の低迷と、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの影響が見通せないためで、設備投資が引き続き好調を維持するとは想定しにくい。GDPの6割弱を占める個人消費も0・4%増と勢いはなく、公共投資はマイナスである。
昨年12月に15年度補正予算案(総額3・3兆円)と16年度予算案(一般会計総額96・7兆円)がそれぞれ決定した。16年度予算案は総額こそ4年連続で過去最高になったが、その伸びは0・4%増とわずか。補正予算も14年度に3・1兆円を計上していたから、補正を考慮しても財政(予算)のGDP押し上げ効果はよくて0・6%程度か。
政府は年度後半に再増税を見越した駆け込み需要なども想定し、16年度は実質1・7%成長との見通しを示しているが、財政だけでその達成は遠く及ばない。民間も設備投資には前述の通り不安があり、春闘での賃上げに期待がかかる。経済界は経済の好循環実現には相応の賃上げが欠かせないと政府の要請に前向き姿勢を示しているが、実施するかどうかはそれぞれの企業の判断次第である。
先行きへの懸念大きい
法人実効税率の引き下げや環太平洋連携協定(TPP)の実質合意などは確かに援軍だが、中長期的な投資環境整備の性格が強く、短期的な成果は求めにくい。海外経済の先行きも不透明で輸出の伸びは期待しにくい状況である。17年4月の再増税までに成長力をどこまで回復できるか懸念は小さくない。
今後の経済状況によっては、年度後半に再増税実施の見直しか、大型の補正予算編成の検討が求められる。
(1月5日付社説)