6月日銀短観、予断を許さぬ景気の行方


 日銀が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業で3四半期ぶりに景況感が改善。大企業非製造業は改善が継続するなど、消費税増税前の水準までほぼ回復したようである。

 しかし、3カ月後の見通しでは、非製造業を中心に慎重な見方をしており、消費の行方に根強い警戒感も見られる。本格的な景気回復に結び付くか予断を許さない状況が続いている。

 円安が続くか不透明

 景況感改善の牽引(けんいん)役は大企業非製造業である。これで3四半期連続となり、業況判断指数(DI)がマイナスの業種はなくなった。特に「小売り」や「宿泊・飲食サービス」など消費関連の業種で改善が進んでいる。

 円安の進行により外国人観光客が大幅に増え、中国人らのいわゆる「爆買い」などで消費が拡大していることや、日本人の国内旅行が好調なことも寄与している。日銀の大規模金融緩和を背景とした円安効果の表れと言える。

 大企業製造業は3四半期ぶりに景況感が改善したものの、業種によりばらつきが見られる。「生産用機械」など設備投資関連の業種を中心に堅調だった一方で、海外景気回復の鈍化などから円安にもかかわらず輸出や生産が冴(さ)えず、特に自動車販売などの不振で「自動車」や「鉄鋼」などは悪化。中小企業製造業も小幅悪化である。

 15年度の設備投資計画が、大企業全産業で前年度比9・3%増と、6月調査としては9年ぶりの高い伸びになったことは、確かに明るい材料である。

 ただ、気になるのは3カ月後の見通しで、大企業製造業が小幅改善を予想しているほかは、非製造業を中心に慎重で悪化の予想となっている点である。

 特に現在の好調な業績を支える円安や原油安が、今後も続くかは不透明だ。現にガソリン価格はこのところ上がり続けており、為替もギリシャ問題などから徐々に円高方向に向かいつつある。

 非製造業の業況改善をもたらしている訪日客の増加は先述の通り、円安の影響が大きい。大企業製造業も円安に少なからず支えられている。これらに、ブレーキがかかる可能性がある。

 もっとも、中長期的には円安に頼らず、内需主導の自律的拡大を持続することが日本経済の望ましい姿と言える。

 消費税増税の影響がほぼなくなりつつある中、実質賃金は25カ月連続でマイナスとなった。春闘での賃上げで基本給やボーナスが伸び、給与総額は前年比でプラスが続いているものの、円安などによる物価上昇が響いているためだ。

 所得環境に関しては、行き過ぎた円安の是正の動きはむしろ望ましいと言える。賃上げによる消費の底上げにつなげる好機にしたい。

 一段の成長力強化を

 デフレ脱却途上の現在、先の「骨太の方針」では硬直的な歳出上限の設定を見送り、一定の幅を持たせた「目安」の導入で経済成長を阻害しないよう配慮した。

 これは正しい選択と言える。成長戦略で一段の成長力強化に努めたい。

(7月3日付社説)