「スマート・シティ」へ動くフィンランドのオウル市

初のセミナーに欧州から多数参加

「北スカンジナビアの首都」自任

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オウル川から見るオウルの街並み

 「スマート・シティ」はハイテクを駆使し、環境、エネルギー問題に対応した環境配慮型都市で、再生エネルギーを最大限に利用する社会のことだ。オウル市は先駆けて「スマート・シティ」を実現しようと努力してきた。

 オウルは、フィンランドの首都ヘルシンキから北西600㌔にある同国中部の湾岸都市。人口20万人、国内では6番目に大きい中堅都市だ。800以上のハイテク企業がオウル都市圏に進出している。

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オウル市長マッティ・ペンナネン氏

 今年で410周年を迎えるオウル市は、かつては鮭と木タールで栄えた港町。今ではIT関連技術の集積都市テクノポリス、半導体関連を対象としたマイクロポリス、医療・福祉関連のメディポリスの三つの分野での発展を目指している。医療・福祉関連では仙台市など、日本の都市と協力・提携関係を結んでいる。

 かつての世界大手携帯通信電気会社のノキアが技術革新・開発に投入してきた地であり、国内外の若いエンジニアたちが活躍してきた地でもある。毎年、100近くのスタートアップ(短期事業体)が誕生している。市民の平均年齢は37歳と若い。

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ビジネス・オウル・ディレクターのユハ・アラームルスラ氏

 そのオウル市で5月初め3日間にわたって国内外で初めてといわれる「スマート・シティ」セミナーが開催された。フィンランド各地はもちろんヨーロッパの国々からも参加、参加者は380人に上った。フィンランドだけでなくスウェーデンやノルウェーからも市長が参加した。

 今回のセミナーでは、オウル市が「スマート・シティ」として力を入れている高度道路交通システム、ブロードバンド・エコノミクス、デジタル・ヘルス、スマート教育(教育のデジタル化)、環境ビジネスの5分野に分かれ発表ならびに質疑応答が活発に行われた。

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オウル空港に掲げてある「北スカンジナビアの首都、オウル」のスローガン

 オウル市のマッティ・ペンナネン市長は、オウル市が「スマート・シティ」として、特にイノベーション分野における「北スカンジナビアの首都」として、フィンランドのみならず世界の発展に貢献できる都市となることを目指していると抱負を述べた。

 欧州委員会情報社会総局長付政策アドバイザーのブロル・サルメリン氏は「オウル市の強みはフリーのWiFiによるネットワークがすでに敷かれていることだ。市民が容易に新たなシステムや技術の情報を得、それらを自らテストし世界に発信していけるからだ」と述べた。

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「スマート・シティ」セミナーの様子

 また、フィンランド遠隔医療・eHealth学会会長、ヤルモ・リポネン氏はスマートシティの一番の特徴は「市民が参加する市であること」と語った。

 今回のセミナーはヨーロッパ地域が中心となったセミナーだった。ビジネス・オウル・ディレクターのユハ・アラームルスラ氏によると、秋にはグローバルレベルのセミナーを予定している。

(文と写真=ヘルシンキ・吉住哲男)