14年度マイナス成長、消費増税は必要だったのか
デフレ脱却を目指す安倍政権にとって、実に悔やまれる残念な1年間であった――。内閣府が20日発表した2014年度の実質GDP(国内総生産)は前年度比1・0%減になり、前年度から勢いづいていたデフレ脱却の動きを頓挫させてしまった。
14年4月からの消費税増税である。政府、特に財務省は税収の動向などから本当に増税が必要であったのか検証し、その結果を公表すべきである。17年4月に実施予定の再増税の是非についても再考を求めたい。
震災より大きかった影響
年度としてのマイナス成長は、5年ぶりである。14年度は4月の消費税増税以降、4~6月期、7~9月期と2期連続のマイナス成長。その後も回復に力強さは戻らない。増税の影響は政府関係者の想定以上に長引き、個人消費や設備投資の回復は遅れている。
例えば、GDPの6割弱を占める個人消費は3・1%減と、比較可能な1995年度以降で最大の下落幅である。「アベノミクス」1年目で勢いづき始めていたこともあって、増税前の駆け込み需要が大きくなった分その反動減も大きくなった。また増税や円安により食品などの値上げが相次ぎ、物価上昇に所得の伸びが追い付かず、実質所得の低下で消費マインドが冷え込んでしまったのである。
増税後の消費を中心とした景気の落ち込みは、負の経済循環の起点になり、企業の設備投資意欲にも水を差した。大企業を中心に業績は好調だったが、様子見姿勢が強まり、結果、0・5減とマイナスである。
ここ数年の実質成長率を見ると、東日本大震災のあった11年度は0・4%と前年の3・5%から急落したが、それでもプラス成長を維持。その後も12年度1・0%、13年度2・1%と順調に伸びを高めていた。それが14年度はマイナス1・0%。いかに消費税増税の影響が大きかったかである。
特に13年度は、安倍政権が実質的に大胆な金融緩和と機動的な財政政策、民間活動を促す成長戦略の「アベノミクス」を推進した1年目の年である。力不足の成長戦略に若干もたついたが概ね景況感の改善を重ね、デフレ脱却の道を歩み続けていた。年度後半には増税を控えた駆け込み需要が大きくなったが、2年目の14年度はその反動減も大きかったというわけである。
税の自然増収に影響を与える名目GDPは、13年度1・8%増、14年度は1・4%増である。実質成長率がマイナスでも税収が増えているのは、名目成長率がプラスだからだが、増税がなかったら名目成長率はさらに高くなり、税率3%アップ分の税収約8兆円が自然増収で得られた可能性が十分考えられる。補正予算での景気対策費もなしで済んだはずである。財務省には税収動向の分析検証を求め、17年4月予定の再増税が必要なのか、政府に再考を促したい。
企業は好循環構築に貢献を
15年1~3月期の実質GDPは、増税から1年、遠回りしてようやく内需に持ち直しの兆しが出てきた。賃上げや原油安の好材料もある。企業経営者には経済好循環の再構築につながる動きを期待したい。
(5月22日付社説)