党首討論、安保法制の丁寧な説明を


 今通常国会で初めての党首討論が行われた。民主党は1月、維新の党は一昨日に党首交代したばかりであり、共産党は昨年の衆院選結果を受けて討論に加わるなど、安倍晋三首相にとって初顔合わせとなる党首討論になった。討論では安全保障関連法案に多くの時間が割かれたが、政府・与党は今後も審議を通じて丁寧に説明し、国民の理解を得る必要がある。

 首相は同盟強化を強調

 民主党の岡田克也代表は、冒頭で日本国憲法に対する認識を首相に尋ねた。憲法改正を進める考えの首相は①平和主義②主権在民③基本的人権――の「基本的考え方は変えない」と表明する一方、戦後日本を守った抑止力として①日米同盟②自衛隊の存在③外交力――を挙げた。特に、安保法制によって「日米同盟の絆が強くなり効率的に抑止力を発揮できる」と意義を強調した。

 本来は日米同盟をなす安保条約や自衛隊にかかわる安保条項が憲法に明記されているべきだ。だが、党内に護憲派を抱える岡田代表は憲法論議には踏みこまず、首相の憲法の平和主義への評価を逆手に、集団的自衛権の一部行使を伴う安保関連法案について「平和憲法が揺らぐ」として首相の姿勢を追及した。

 戦争放棄、交戦権否認、陸海空軍不保持を明記した憲法9条を「平和憲法」と呼び、条文を守れば平和が保たれるという安保観を持つ政党・会派や議員が存在する以上、安保関連法案に関しては政府・与党は何度も答弁を要しよう。

 首相は「地域や国際社会が安全であってこそ日本の平和は保たれる」と述べ、そのための安保関連法案の意義や武力行使の新3要件を説いた。一方、岡田氏は法案の通り自衛隊の活動範囲を広げ、後方支援でも米軍の武器・兵士を運べば「リスクは飛躍的に高まる」というリスク論を展開し、「事実を事実としてきちんと話さないと議論にならない」と指摘した。

 野党は、自衛隊の活動が広がることで現実に必要最小限とされる武力行使をする可能性が高まることのリスクを論じるが、実際は身を守るための最終的なリスク回避である。

 自衛隊は海外では軍と認識されており、作戦遂行時には危険を伴う。一般的に軍隊の派遣先のリスクは当然であり、だからこそ武装している。この前提さえも悪しきものと捉える戦後の護憲世論の中で生まれ育ち教育を受けてきた国民に対し、政府・与党は安保法制について丁寧な説明が必要だ。

 維新の新しい党首になった松野頼久代表は、安保関連法案について通常国会延長後の8月に成立させることに異議を唱え、国連平和維持活動(PKO)協力法の成立を例に「国会をまたぐ覚悟」を求めた。ただ、PKO協力法をめぐっては旧社会党が審議を遅らせるため、不毛の牛歩戦術を展開しており、参考にならない。十分な審議を行ったら速やかに採決をすべきだ。

 責任野党として追及を

 維新は責任野党の立場に立って、この法案で安倍首相の言うような所期の目的を達成できるかどうかの観点からの追及も求められる。

(5月21日付社説)