スポーツ庁創設、選手強化へ効果的な施策を


 スポーツに特化した新たな行政組織「スポーツ庁」が10月に文部科学省の外局として創設されることになった。5年後の東京五輪・パラリンピックのメダル獲得数の目標を達成できるよう、選手強化へ効果的な施策を行う必要がある。

 関係行政機関の調整担う

 スポーツ庁の定員は121人で、長官の下に「スポーツ健康推進課」「競技力向上課」「スポーツ国際課」「オリンピック・パラリンピック課」「政策課」の5課が設置される。

 日本のスポーツ界に関しては、これまで縦割り行政の弊害が指摘されてきた。国土交通省がスタジアムや体育館の建設、厚生労働省がリハビリとしての障害者スポーツ、経済産業省が経済効果を目的としたプロスポーツ、文科省が学校体育をそれぞれ担当している。

 もっとも、スポーツ庁に移管されたのは厚労省の障害者スポーツ部門だけで、各省にまたがる権限や財源の一元化を実現できたわけではない。スポーツ庁の役割は関係行政機関の事務の調整で、五輪成功に向けて効率的に政策を進めることが求められる。

 日本は東京大会で、五輪20~33個、パラリンピック22個という金メダル数の目標を掲げている。2012年のロンドン大会での金メダル数が五輪7個、パラリンピック5個だったことを考えれば簡単ではない。

 スポーツ庁が旗頭となって行う競技力の向上は「選択と集中」という理念に集約される。メダル獲得の可能性が高い競技を選び、強化予算を集中させる。ロンドン五輪で世界3位の金メダル数を達成した英国をモデルとしている。

 中心的な役割を担うのがスポーツ庁の「作業部会」だ。スポーツ関連団体の代表がメンバーで、競技団体に世界大会のメダル数の目標などを設定させ、達成度などに応じて強化費を配分する。

 強化費を適切に会計処理しているかといった組織のガバナンスも評価対象となる。一昨年から昨年にかけて、日本フェンシング協会が領収書を偽造して補助金を受け取るなど、日本オリンピック委員会(JOC)加盟団体の不祥事が相次いで発覚した。強化費の重点配分は、各競技団体の組織改革も促すことになろう。

 文科省によると、「競技力向上事業」の15年度予算は74億円で、14年度の約1・5倍に増えた。JOCの要望では、15年から6年間で必要な強化費は800億~1000億円に上る。原資は税金などの公的資金だ。有効な活用が求められる。

 スポーツ庁には東京五輪を成功に導くことのほか、スポーツの振興という役割もある。下村博文文科相は「国民が天寿を全うするまで生き生きと健康に暮らすためには、スポーツによる健康管理が重要だ」と同庁設置の意義を語った。

 裾野を着実に広げたい

 11年に成立したスポーツ基本法は、スポーツについて「地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与する」としている。裾野を着実に広げていきたい。

(5月20日付社説)