中国主導のアジア投資銀には懸念が残る
中国主導で年内の設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、英国をはじめ欧州の主要国が相次いで参加する意思を表明した。
AIIBはアジアの発展途上国のインフラ整備を支援する国際金融機関だ。だが、返済能力を適切に評価した融資や組織運営での透明性確保ができるのか懸念が残る。
欧州主要国が参加表明
本部を北京に置いて総裁は中国人が就任し、中国が資本金の50%まで出資できるとされる。中国は創設メンバーとなるための申請期限は3月末としており、参加表明は現在、30カ国以上に上る。
英政府はロンドンの金融街シティーを中国国外の人民元取引の中心拠点にすることを目指している。欧州では英国に続いて、ドイツ、フランス、イタリアなどが参加を発表し、AIIBの存在感は増した。
だが日米両国は、AIIB設立に中国の影響力を強める狙いがあるとの懸念を抱いており、参加の是非については慎重な立場を取っている。両国が中心となって運営してきた世界銀行やアジア開発銀行(ADB)との役割分担も不明確なままだ。AIIBが米国主導の国際金融秩序に挑戦し、対話と協調を損なう可能性があるとの考えも日米には強い。
また、融資対象事業の環境や労働条件に関する基準が世銀などに比べて低くなるとの不安もある。安倍晋三首相はAIIBについて、国会答弁で「公正なガバナンスを確立できるか、債務の持続可能性を無視した貸し付けを行うことで他の債権者にも損害を与えることにならないか」と述べた。
中国はこのところ景気が減速している。しかし投資依存型の高度成長から消費主導型の安定成長に移行する取り組みを進める中、巨額の財政出動で景気刺激策を取ることは難しい。AIIBを通じてアジアでのインフラ事業を展開することで、中国企業の輸出を後押しする狙いもあろう。習近平政権が打ち出した「シルクロード経済圏」構想にもAIIBからの資金が活用されるとみられている。
欧州は地理的に中国から遠く、英国などは安全保障上の脅威に直面する日米と違って実利優先の姿勢を示したと言える。ウクライナ危機によるロシアへの制裁で欧州経済が打撃を受けるとの見方が、AIIB参加を促した面もあろう。
アジアでは年間7760億㌦(約94兆円)のインフラ資金が必要とされ、既存の枠組みだけでは十分に対応できない。世銀などの融資決定のスピードの遅さに途上国が不満を持っているのも確かだ。AIIBが適正に運営されれば、インフラ整備が加速するなどの利点はある。
この点について、麻生太郎財務相は「(ADBとAIIBの)両方で一緒にやっていく関係が最も望ましい」と語る一方、「(両機関の融資に関する)ルールが全然違えばそうならない」とも指摘した。
無理な融資は許されない
中国は世界2位の経済大国である。自国の利益拡大のため、AIIBを通じて無理な融資を行うことは許されない。
(3月27日付社説)