免震ゴム不祥事、再発防止へ品質管理徹底を
大手タイヤメーカー・東洋ゴム工業が、10年余にわたり、国の性能基準を満たしていない免震ゴムを製造、販売していた不祥事が発覚し、波紋を広げている。免震ゴムは東日本大震災をきっかけに需要が急拡大している部材の一つで、建物の安全への信頼を大きく揺るがしかねない由々しき事態だ。再発防止に向け、品質管理に対する徹底的な検証が求められる。
審査機関見抜けず放置
免震ゴムは建物の基礎部分に使われ、伸縮によって地震の揺れを吸収して倒壊を防ぐ。東洋ゴムは2003年、国土交通省から免震材料の性能認定を受けていた。
しかし、03~11年に販売した免震ゴムなど免震材料の一部は認定基準を満たしていなかったにもかかわらず、基準内に収まるよう数値を改竄(かいざん)した上で出荷されていた。サイズの変更に伴い06年に同省に再申請した際も、実際の性能を偽った製造実績を提出していた。
東洋ゴムによると、性能試験を担当していた社員が、予定通りに納品したいと考え、データを改竄したが、会社側はその不正に気付かなかった。約1年前に偽装の疑いが出た後も問題の製品を納入し続けていた。
一般的に国の認定制度は、企業が提出する性能試験データを、国が委託する民間の評価機関が査定する仕組みで、免震部材も同様。評価機関はデータの改竄を見抜くことができず、その結果、放置されてきた。
これまでに認定基準に満たない製品2052基が販売され、宮城県や高知県など18都府県で計55棟に使われたことが明らかになった。その中には高知県本庁舎(高知市)など自治体の庁舎、公立病院もある。その後、これ以外の建物に用いられた疑いも浮上している。
同社は2007年にも、建材の断熱パネルで性能偽装が発覚し、当時の社長が引責辞任している。品質管理の重要性に対する認識欠落を厳しく指摘せざるを得ない。
太田昭宏国交相は問題の2052基について、同社に交換を指導する方針だ。同省は震度5強程度の地震が起きても建物が倒壊する恐れはないことを55棟全てで確認したと発表したが、方針は変わっていない。同社は責任を持って正規品の製造を進め、交換に応じなければならない。政府は性能認定制度に不備はないのか、再発防止に向けて検討が必要だ。
一方、わが国の建材、ゴムなどを含む素材の製造技術は非常に優秀で、その加工製品への信頼性も高かった。免震ゴムも同様で、マンションや病院だけでなく、多様な物流倉庫での利用も広がっている。
関連する防振部材が自動車や鉄道に使用されるなど、これらの製品は海外でも注目されている折、今回の不祥事の影響が心配だ。
東京五輪関連で危惧
20年の東京五輪に向けた建設ラッシュで、免震機能を備えた高層ビルの建設も増える見通しだ。関係者は「免震性能の確認を厳しく求められれば、着工が遅れかねない」(建設大手)という。その懸念払拭(ふっしょく)にも努めなければならない。
(3月28日付社説)