ニホンウナギの資源回復へ一層の取り組みを


 生息数が激減しているニホンウナギの保護と資源管理を強化するため、養殖量を制限することで日本、韓国、中国、台湾の4カ国・地域が合意した。

 ウナギの国際的な資源管理の枠組みができるのは初めてだ。しかし規制には不十分な面もあり、資源回復に向けて一層の取り組みが求められる。

 「絶滅危惧種」に指定

 4カ国・地域では来月から1年間、養殖業者が仕入れることができる稚魚(シラスウナギ)の量を、前年に比べて2割削減する。日本の場合、養殖に使えるのは前年(2013年11月~14年10月)実績の8割に当たる21・6㌧。日本への輸出が多い中国と台湾の上限はそれぞれ36㌧と10㌧となる。

 09年に約25㌧あった国内のシラスウナギの漁獲量は10年から4年間、深刻な不漁に陥った。特に13年は約5㌧と過去最低水準に激減。養殖目的で乱獲されただけでなく、親魚が生息する河川環境の悪化も減少の理由とされている。

 当初、中国や台湾は規制に難色を示していた。だが、ニホンウナギが6月、国際自然保護連合(IUCN)によって「絶滅危惧種」に指定され、16年に開かれるワシントン条約の会議で輸出入が規制される可能性も指摘されている。

 そうなれば、各国・地域が被る損害は大きい。危機感を共有し、合意にこぎ着けたことを歓迎したい。

 しかし、これは第一歩にすぎない。今回の枠組みは、法的拘束力のない「紳士協定」という位置付けで、違反した場合の罰則もない。養殖業を管理する国際組織も設立されるが、具体的な削減方法は各国・地域に任される。

 ウナギ類の生態は完全に解明されていないため、シラスウナギの養殖量を2割減らしても、資源量がどの程度回復するかは予測できない。特に14年は比較的豊漁だったため、削減量が妥当かどうかは疑問が残る。

 水産庁はシラスウナギの漁獲量を毎年精査した上で「本当に(削減幅が)2割でいいのか考える必要がある」としている。継続的な規制の見直しなどが必要だろう。

 資源保護のため、水産庁は参入が自由だったウナギ養殖業を11月から届け出制に変更する。将来は許可制への移行も視野に入れ、養殖の抑制を図る。

 危機感は養殖業者の間でも強まっている。養殖業が盛んな地域では、宮崎県が10~12月を親ウナギの禁漁期としたほか、福岡県と愛知県は産卵のため川を下る親ウナギの漁獲自粛と再放流を実施した。

 静岡県は、養殖業者らが浜名湖で取れた産卵前の親ウナギを買い取り、海に放流するなど資源回復に向けた取り組みが広がっている。こうした努力を着実に積み重ねたい。

 日本は各国の先頭に立て

 養殖量に上限を設ければ、ウナギが値上がりするのは避けられない。

 しかし、日本は世界最大の消費国である。これ以上の減少を食い止め、伝統的な食文化を守るためにも各国・地域の先頭に立って資源管理を進める必要がある。

(10月15日付社説)