地方創生法案、日本全国が活性化する議論を


 まち・ひと・しごと創生(地方創生)法案が衆議院で審議入りした。

 安倍晋三首相が「地方創生国会」と銘打った臨時国会の正念場であり、長期的に日本の再生を期する重要法案として与野党は臨んでほしい。

国民に努力と協力促す

 地方創生法案は、超高齢化と少子化による人口減少で衰退に向かう日本の起死回生策に取り組んでいこうというものだ。先の内閣改造で安倍首相は、自民党幹事長として首相を支えていた石破茂氏を地方創生担当相に抜擢(ばってき)するなど、万全の布陣を敷いた。

 「急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正」するなどの目的(1条)のもと、基本理念(2条)として「結婚、出産又は育児についての希望を持つことができる社会が形成されるよう環境の整備を図ること」などが示された。

 これらのための施策を計画する責務を国、地方公共団体に求め、事業者や国民に努力と協力を促している。いわば国、都道府県、市町村、企業、国民など日本人が一丸となって国の衰退に歯止めを掛けるために知恵を絞り、行動していくことを呼びかけるものだ。

 野党側からは同法案について「理念法で内容がない」などの指摘がある。だが、日本がかつて経験したことのない衰退局面に対する妙案はそう簡単には出るものではない。

 実際には、各レベルで細かい議論と試行錯誤を長期的に繰り返すことで、広範多岐にわたるさまざまな施策が相乗的な効果をもたらすようになろう。数世代をかけて取り組まなければならない難題である。

 政府・与党も来春の統一地方選前の一過性の掛け声に終わらせては断じてならない。法案は国と自治体それぞれに「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を求めているが、首相は国の今後5年間の総合戦略について年内にまとめるよう作業を加速させている。

 一方、地方創生の主人公は自治体であり、戦略策定の中で地方に熱意ある議論が生まれ、解決の糸口が生まれることを期待したい。

 野党側からは地方分権、道州制などを求める声も出ているが、国政の場での地方制度改革議論の前に、まずは地方の真摯(しんし)な取り組みが必要だ。

 既に、過疎化を跳ね返そうと先駆的な取り組みをしている自治体もある。地方の状況はさまざまであり答えは一つではない。が、地場産業の再生や企業拠点の移動、結婚と育児に有利な住環境、新住民との調和、子育てに好意的な社会的環境作りによる母親への心理的サポートなどハード面・ソフト面の課題は共通のものがあろう。

「心の再生」も忘れるな

 同法案3条には教育の役割も明記されている。人口問題は個々人の人生の営みに直結しており、解決には人が人をいたわる意識の向上が欠かせない。

 過度な東京一極集中は利害損得に走りすぎた世相の表れではないのか。「人を愛する心の再生」も忘れてはならない。

(10月16日付社説)