増税から1ヵ月経過、反動減へ予断なき対応を
消費税率が5%から8%へ引き上げられてから1カ月が経過した。予想通り、駆け込み需要の反動減が幅広い品目で顕著に表れている。
政府内ばかりでなく企業経営者にも、反動減は「想定内」との見方があるが、不穏な海外情勢もあり、予断は禁物である。景気腰折れ防止に万全を期すと同時に、一段の株価上昇へ実効ある成長戦略が求められる。
実質賃金の減少続く
2日発表の3月家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は34万5443円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比7・2%増。家電や食料品など多くの品目で駆け込み需要が発生し、1975年3月(8・8%増)以来39年ぶりの高い伸びだった。
消費税が導入された89年は3月6・3%増、4月0・8%減。税率が5%に引き上げられた97年は3月5・8%増、4月1・0%減だったから、今回は一段と高い。「山高ければ谷深し」で、これまでに明らかになった経済諸指標では、駆け込み需要の反動減が顕著に表れている。
日本自動車販売協会連合会(自販連)によると、4月の新車販売台数は前年同月比5・5%減。減少幅がそう大きくないのは、相次ぐ新型車が人気で3月末までに納車ができず、4月以降に売り上げを計上する「受注残」を抱えたホンダや、納車待ちが多かった軽自動車メーカーがプラスとなったためで、トヨタは18%の大幅減となった。
4月以降の新規受注がダイハツで3割落ち込み、受注残も次第に解消に向かう。業界では5月以降の販売は相当厳しくなると予想する。
各百貨店の売上高も、高額な宝飾品を中心に8~15%のマイナス。家電量販店でも洗濯機や冷蔵庫など大型の白物家電を中心に1~3割減となったようである。
もちろん、落ち込みが小さいところもある。反動減は「予想の範囲内」(菅義偉官房長官)で、早期に回復するとの見方 は、政府内ばかりでなく、企業経営者にも見られる。景気回復を背景に影響は限定的なものにとどまる、大企業を中心に今春闘でベースアップの実施や一時金の増額が相次いだ――などが主な理由である。
確かに所得環境は好転しつつあるが、消費増税とは別に、円安や輸入原材料の高騰から、食料品の値上げや電気をはじめとする公共料金の引き上げが相次ぐ。現金給与総額は増えているものの、物価の変動を考慮した実質賃金(3月)は前年同月比1・3%減と9カ月連続で減少し、物価上昇に賃金上昇が追いつかない状況が続いている。
景気に先行する株式相場のこの1カ月は、ウクライナ情勢などの不透明要因もあり、反発のきっかけをつかめずにいる。企業経営者は、3月の日銀短観で今年度の経常利益見通しが全規模全産業で前年度比2・2%の減益とみるなど相変わらず慎重姿勢を崩していない。
実効ある成長戦略を
政府・日銀は予断なく景気腰折れ防止に万全を期すのは当然だが、特に政府は6月に示す成長戦略でどこまで実効ある中身を打ち出せるかが問われる。
(5月4日付社説)