憲法記念日、現状追認から改憲に着手せよ


 憲法記念日を迎えた。施行後67年間の我が国の歩みを振り返るとともに未来を展望し、憲法について考える一日としたい。

改正国民投票法が成立へ

 開会中の通常国会では、憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案が成立する見込みだ。成立すれば、施行後の4年間は投票年齢が20歳以上、4年後には18歳以上に引き下げられる。若年層が憲法に関心を持つよう、公正中立な憲法教育を施し、国民投票が行われた際には自らの熟考した賛否判断を示し得るよう、また高い投票率になるよう期待したい。

 国会では改憲原案を審議する憲法審査会が始動しており、法的環境は整いつつある。改憲が視野に入ってきた。

 今後国会が発議すれば、日本国民は初めて国家の基本法を改正する責務を担うことができるのだ。国家の基本政策の中で憲法によって制限を加えられているものについて、特に解釈で補われてきた自衛権に関しては、憲法に明文規定を設ける改正をすることが望ましい。

 また、今年の憲法論議の焦点に集団的自衛権がある。これまで政府の憲法解釈によって行使を禁じられていたが、安倍晋三首相は部分的に行使を容認する検討を進めている。近く有識者会議が提出する報告書を受けて憲法解釈を変更する閣議決定を行う方向だ。

 先週訪日したオバマ米大統領は日米首脳会談で支持と歓迎を表明した。ただ、これまで公明党や自民党内にも反対論や慎重論が存在したことから、解釈変更によって容認するのではなく「憲法改正」が筋であるとの主張も見られる。

 このような「改憲」論が、容認に反対するための方便であってはならない。改憲発議権を有する国会に議席を持つのであれば、具体的な改憲原案を示し、実現を図るべきだ。

 もともと集団的自衛権は個別的自衛権とともに独立国が有する権利として国連憲章でも認められている。しかし日本国憲法は、第2次世界大戦で我が国がポツダム宣言を受け入れ降伏した結果による連合国軍の占領下で制定されたため、自衛権について明記されていない。

 現憲法と日米安保体制の下、日本は戦後復興と高度成長を果たした。しかし、本来であれば独立を取り戻した時点で独立国に相応しい内容に憲法を改めるべきであった。

 無論、当時の政治家も改憲の必要性を認識していた。1955年には自由党と民主党による保守合同で「自主憲法制定」を党是とする自由民主党が結党された。

 だが、東西冷戦による激しいイデオロギー対立を背景とする左翼陣営の護憲運動に世論は長年支配され、憲法施行から国民投票法制定まで半世紀の歳月を費やしてしまった。

自衛隊について早急に

 ただし法的環境が整ったとしても、国民投票による改憲はこれまで日本では行われたことがない。

 国民投票の経験を積む意味でも、まずは国内外での活動が定着している自衛隊について現状追認の形での改憲を早急に行うべきだ。

(5月3日付社説)