こどもの日、子供には未来の全てがある


 きょうは「こどもの日」である。大人が子供たちの健やかな成長と幸せを願う気持ちは、いつの時代も変わらない。

 しかし、いま日本では子供がどんどん少なくなっている。これは、国の未来が先細ることを意味している。

 15歳未満の減少続く

 総務省によると、4月1日現在の15歳未満の子供の推計人口は前年より16万人少ない1633万人で、1982年から33年連続の減少。年齢が下がるごとにその数は減っている。総人口に占める子供の割合は12・8%で、主要国の中でも最低水準だ。

 こういう状況の中、最近は人口減少や少子高齢化を前提として、日本が経済力を維持するための方策を論議する傾向が強まっている。だが、これは一種の対症療法にすぎない。

 将来、生産年齢人口の減少を外国人労働者のさらなる受け入れで補い、産業の高度化を進めて成長を何とか維持することが論じられもしている。しかしそれは、経済だけを念頭に置いたものであり、国家の健全な発展と安定を見据えた議論とはなり得ない。

 子供のいない日本に未来はないことをはっきりと知るべきである。政府は文字通り国家百年の計として、人口減少を食い止め、出生率を高めるために、大胆で実効性のある施策を講じる必要がある。

 出生率の低下の背景には、晩婚化や雇用状況の悪化による若い世代の経済的な困窮など様々な経済社会的な要因が指摘される。政府は結婚や出産、子育てを支援する長期的な施策を打ち出すべきである。

 消費税一つとっても、子供用品に対して優遇措置がないのは、子育てをする人々への冷淡さの表れととらえられても仕方がない。“子供の貧困”が問題となるようでは、日本は先進国とは言えない。

 少子化の背景としてもう一つ無視できないのは、価値観やライフスタイルの変化である。例えば、「おひとりさま」という言葉がもてはやされるように、結婚をしないこともライフスタイルの一つであるという風潮だ。こうした多様性を受け入れる寛容さは、成熟を示すものではあるが、それが理想ではない。

 人間が結婚し、子供を産み増やすことは最も自然な営みであり、日本人に限ってみても2000年以上にわたって行ってきたのである。子育てには苦労も伴うが、それ以上の喜びを与えてくれる。それは仕事や趣味の世界では得られないものだ。

 最近は過疎の村に若い夫婦が移り住み、自然に恵まれた環境の中で、たくさん子供を産み育てるなどの現象も起きている。おそらく経済的にはそれほど恵まれず、都会と違って娯楽も少ないだろう。しかし、彼らはそれ以上の価値を田舎での子育てに見いだしたのだ。

 国民レベルで発想転換を

 東京の出生率が1・1と全国最低レベルとなっているのは、出生率の低下と都市型のライフスタイルや価値観との関わりを示すものと言えよう。人間としての最も基本的な営みがもっと手厚く保障されるような社会の実現に向けて、国民レベルでの発想の転換が求められている。

(5月5日付社説)