貿易赤字最大、成長の核」育成に努めよ


 2013年度の貿易収支が13・7兆円の赤字と、比較可能な1979年以降で最大の赤字額になった。前年度に比べて約7割増え、3年連続の赤字は初めてである。

 赤字拡大は燃料輸入の増加や円安、消費増税前の駆け込み需要などが主要因。過度に悲観視する必要はないが、製造業の海外生産の進展で輸出が増えにくくなっている面もある。新産業を含め新たな成長の核の育成が、これまで以上に重要である。

 火力発電の燃料費増加

 最近の貿易赤字拡大の始まりは、2011年度である。東日本大震災による東京電力福島第1原発事故を契機に全国の原発が相次いで停止し、現在まで再稼働が進まずにいる。

 国内電力需要の3割以上を占めていた原発による発電を、ほとんど火力発電に置き換えたため、液化天然ガス(LNG)などの燃料費が増え続けているのである。

 13年度に貿易赤字が前年度比7割も増加した要因には「アベノミクス」で進んだ円安により輸入物価が大幅に上昇したことと、景気回復に伴う輸入の増加、これに年度後半からは消費税率引き上げ決定に伴う駆け込み需要が加わった。輸出も前年度比10・8%増えたが、輸入が同17・3%増と輸出以上に増えたのである。

 特に原油18・4%増、LNG18・2%増と燃料の輸入増が目立つ。それは地域別収支で、対中東の13・7兆円の赤字に端的に示され、対中国の赤字(5・5兆円)を大きく上回る。

 輸出の増加については、円安で輸出価格が上昇した影響が大きい。数量では0・6%の小幅増にとどまり、必ずしも十分に伸びているとは言い難い。

 これに関しては海外の景況とともに、自動車や電機など主要製造業による生産の海外移転が進んでいることも見逃せない。為替変動による影響を抑えようとする行動が、構造的に輸出を増やしにくくしているわけである。最近の円安で一部に国内回帰がみられるものの、現地生産強化の動きは基本的には揺るがないであろう。

 大幅な貿易赤字は今後も続くのかどうか。海外経済や為替相場に大きな変動がなければ、為替要因がなくなることや、駆け込み需要の反動減などから、貿易赤字は緩やかに縮小するというのが大方の見方である。貿易赤字拡大を過度に悲観視する必要はないと言える。海外との取引状況は所得収支やサービス収支などを含めた経常収支から判断すべきであろう。

 貿易赤字拡大の主要因である原発の稼働停止は、電気料金の一段の引き上げをもたらし、家計にも企業にも小さくないコスト増要因になっている。安全が確保されたものから、早急に再稼働することを求めたい。

 雇用増加へ新産業振興を

 原発の再稼働が進んだとしても、海外生産の状況などから、貿易収支の赤字基調は当面続きそうである。

 輸出数量を増やす努力はもちろんだが、一段の成長と国内雇用の増加に結び付く新しい産業の振興など、成長の核となる分野の育成に官民ともに一層の努力が重要である。

(4月28日付社説)