新年の日本経済 コロナ収束後の成長力強化を
2021年の日本経済がスタートした。4日の東京証券取引所大発会は、前年末比185円79銭安の2万7258円38銭で引けた。株価は景気の先行きを示すものだが、今年はどんな展開になるか。
新型コロナウイルス感染が再拡大の一途をたどり、日本経済にとっては厳しい状況が続く。雇用の維持に万全を期しながら、コロナ後を見据え、成長力強化に結び付く政策に地道に取り組んでいきたい。
見通しにくい着実な回復
昨年はコロナ感染拡大によって、まさに歴史的な激変の年となった。感染拡大防止のため緊急事態宣言が発令された期間を含む昨年4~6月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比7・9%減、年率では28・1%減とリーマン・ショック直後の09年1~3月期の年率17・8%減を上回る戦後最悪の歴史的な落ち込みになった。
続く昨年7~9月期は前期の反動もあり、年率22・9%増の大幅な回復率となった。しかしGDPの規模で見ると、5割強の戻りにとどまっており、その後の感染再拡大の状況から類推すれば、着実な回復が見通しにくい現状である。
政府は昨年末、3度目のコロナ対策を盛り込んだ20年度第3次補正予算案(一般会計の追加歳出総額21兆8353億円)と21年度予算案(一般会計総額106兆6097億円)を決定。「15カ月」予算として「切れ目なく景気を下支えする」(麻生太郎財務相)姿勢を示す。
だが、経済再生に前向きな需要喚起策「Go To トラベル」は、感染拡大防止のため昨年末から今月11日まで全国一斉停止となり、十分な効果を発揮できずにいる。
菅義偉首相は年頭の会見で、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を週内にも発令し、「Go To」策についても12日以降の再開は難しいことを明らかにした。
当面はコロナの感染拡大防止が最優先の課題である。コロナ感染が首都圏を中心に拡大し続け、収束に転じる気配を見せない以上、当然である。同時に、ワクチン接種の早期実施や水際対策の強化、医療供給体制の充実を進めることを首相は会見で表明した。「国民のために働く内閣」として国民の生命を守り、安心、安全を確保することに全力を尽くしてほしい。
最近の感染拡大の状況から、多くの企業が先行きに対し厳しい見通しを示している。当面はやむを得ないだろう。その当面がいつまでになるか。感染拡大の状況次第ということだが、夏には東京五輪が控えるから、春までには何とか収束のめどを付けたい。検討に入った緊急事態宣言の内容、具体的な措置は、首相が表明したように「集中的に」効果あるものにしたい。
生産性向上の有力手段を
忘れてならないのは、コロナ後を見据えた成長強化策だ。首相が今回の会見でも強調したが、デジタル化の推進と脱炭素社会の実現を目指した取り組みは、人口減少下にある日本経済にとっては不可欠であり、生産性向上の有力な手段でもある。コロナ禍にかかわらず地道に進めていくことが肝心である。