NATO報告書 加盟国の結束強化を図れ


 北大西洋条約機構(NATO)は昨年12月、オンライン外相理事会を開いた。政治的機能強化などの改革案をめぐって協議し、今後10年で対応すべき課題を示した報告書「NATO2030」を公表した。

 中国はロシアと並ぶ脅威

 報告書で注目すべきは、中国への言及である。中国の台頭をロシアと並ぶ脅威と位置付けて「中国の安全保障上の挑戦に、より多くの時間と政治的資源を割き、行動しなければならない」と強調。対中戦略の協議機関設置のほか、中国の活動監視や対中防衛の強化を促した。

 2010年の首脳会議で採択した10年間の行動指針「新戦略概念」では、中国について触れなかった。NATOの対中警戒感がこの10年で大幅に高まったことを示すものだ。

 中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を足掛かりに欧州で影響力を増してきた。しかし、現在は新型コロナウイルスの感染拡大によって反中世論が高まっている。香港で「一国二制度」を骨抜きにする香港国家安全維持法が制定されたことも、欧州各国の反発を招いた。米国に歩調を合わせ、英国やフランスでも中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)排除が進んでいる。

 かつての米国と同様、欧州も中国との経済関係強化が政治的自由の拡大や人権状況の改善を促すと期待した。だが中国は、少数民族の弾圧や南シナ海の軍事拠点化など強権統治や覇権主義的な動きを強化している。

 米国はトランプ政権下でこれまでの関与政策を転換し、中国への対抗姿勢を強めているが、英独仏など欧州主要国でもこうした動きが広がりつつある。外相理には日本や韓国、オーストラリアなどのパートナー国も参加した。NATOと協力して対中戦略に取り組む必要がある。

 NATOが今回、改革を検討することになったのは、フランスのマクロン大統領が、米欧の摩擦が目立ち、加盟国の戦略的連携が欠如していることを「脳死」状態と批判したことがきっかけだ。

 NATOは、24年までに各加盟国が国防支出を国内総生産(GDP)比2%以上に引き上げるという共通目標を設定している。トランプ大統領はたびたび米国の負担が大き過ぎると主張し、加盟国に早期の目標達成を要求。昨年6月には、ドイツがいまだこの目標を全うしていないことを理由に、在独米軍の削減を決定した。

 米国と欧州加盟国との間の溝が深まったことを受け、報告書は「ロシアや中国がNATOの政治的亀裂を悪用し、同盟国の安全を危険にさらす」と強調している。欧州では既に国防支出目標に到達している国もある。欧州最大の経済大国であるドイツも早期達成を目指し、加盟国の結束強化を図るべきだ。

 日本も平和への貢献を

 これはドイツだけの課題ではない。昨年9月に当時のエスパー米国防長官は、中露との大国間競争に備えるため、日本を含む全ての同盟国に防衛費をGDP比2%以上に引き上げるよう訴えた。世界の平和と安定に向け、日本の一層の貢献が求められている。