6月日銀短観 苦境の長期化回避に全力を
予想通りの深刻な数字だ。6月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、ほぼ全業種で景況感が落ち込み、新型コロナウイルス禍の企業に与えた打撃の大きさを浮き彫りにした。
経済活動は再開したが、感染第2波への懸念は強く、本格回復は当分見込めそうにない。雇用情勢のさらなる悪化が懸念される。資金繰り支援の迅速化など、苦境の長期化回避に全力を注ぐべきである。
景況感は11年ぶり低水準
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業でマイナス34と、リーマン・ショックで落ち込んだ2009年6月以来11年ぶり、過去2番目の低水準になった。特に自動車はマイナス72。海外のロックダウン(都市封鎖)などで需要が急減し、大手8社の世界販売台数は4月が前年同月比で半減、5月も4割弱減となった。
裾野の広い自動車産業が受けた打撃は大きく、その影響が鉄鋼など素材メーカーはじめ取引の多い電機など幅広い業種に及んだ。
非製造業も訪日客需要の消失と外出自粛の直撃を受けて大幅マイナス。中小企業はより深刻で、製造業、非製造業ともに過去最大の悪化幅を記録した。
6月短観の回答期間は5月28日から6月30日。緊急事態宣言が解除されて、経済活動が徐々に再開され始めた頃であるが、先行きも大企業では製造業マイナス27、非製造業マイナス14と小幅な改善にとどまり、中小企業では製造業マイナス47、非製造業マイナス33と一段の悪化を見込んでいる。
企業が先行きに明るい展望を持てないばかりか、中小のように一段と厳しい見通しを持つのは、コロナ感染の第2波への警戒からである。
検査体制の整備が進み、また先月19日に都道府県をまたぐ移動自粛要請が全国で解除されたこともあってか、このところ全国で100人前後の新規感染が続き、2日は東京だけで107人が確認された。
感染再拡大の傾向とも受け取れる状況の中、有効な治療薬が開発され、普及するまでは、経済活動も感染対策を施し、しかも工場では稼働率を落とし、店舗やテーマパークなどの娯楽施設では人数を制限した「萎縮営業」にならざるを得ない。当然、収益は下押しを余儀なくされ、設備投資も本格回復は見通しづらい。V字回復は望みにくいということである。
懸念されるのは、これまでの経済活動の自粛による雇用情勢の悪化である。5月の有効求人倍率は、第1次石油危機以来46年ぶりの大きな落ち込みとなり、完全失業率も3カ月連続で悪化した。宣言解除で休業からの復帰が進むなど回復の兆しも見られるが、いわゆるコロナ解雇者は3万人の大台超えという状況である。
迅速かつ継続的な支援を
政府の緊急対策や日銀の金融緩和策により、企業の資金繰りはリーマン・ショック後ほどひどくはないようだが、持続化給付金など支援の遅れは否定し難い。支援が遅れるほど廃業や倒産が増え、失業も増える。政府・日銀は迅速かつ継続的な支援に注力すべきである。