20年の日本経済 経済対策の規模に慢心するな


 新年の日本経済がスタートした。東京五輪イヤーの今年はどんな展開をたどるのか。世界経済・貿易の最大懸念である米中貿易摩擦問題に明るい兆しも見えるが、五輪後の状況には不安の声も根強い。政府は昨年末に26兆円規模の経済対策をまとめた。規模に慢心せず、機敏かつ適切な運営に努めてほしい。

五輪後の不況への懸念も

 昨年10月に実施した消費税増税の影響は、依然続いている。百貨店販売や自動車販売は大きな落ち込みが続き、それに連れて自動車生産も低迷している。

 五輪関連で好調だった建設投資も、五輪後の落ち込みを懸念する声は強い。前回1964年の東京五輪では、競技施設やインフラの建設需要が一巡して投資が縮小し、開催後には「(昭和)40年不況」などと呼ばれる不景気に陥ったからである。

 こうした経験も踏まえて、政府が昨年末にまとめた経済対策には、台風など自然災害からの復旧・復興のほか、五輪後の落ち込みへの対処なども含まれ、事業規模が26兆円と大型になった。この点では復旧・復興に伴う公共事業と併せ、一定の底堅い建設需要が見込め、急速な落ち込みは避けられよう。影響は限定的にとどまるとみたい。

 大きな懸念はやはり、米中摩擦の行方と増税の影響である。米中貿易交渉は昨年末、「第1段階」で正式合意。米国が対中制裁関税の一部を引き下げる代わりに、中国は米農産品の大量購入や金融サービスの開放に応じるというもので、昨年末の東証大納会はバブル期の1990年以来29年ぶりの高値で取引を終えたが、政財界や専門家では賛否が分かれ、貿易摩擦の再燃を警戒する見方は少なくない。

 増税については前述の通り、消費回復が依然見通せない。政府は五輪後も見据えて「個人消費や投資を切れ目なく下支えする」(政府関係者)ため、2020年度予算案でも景気対策に「臨時・特別の措置」として1兆7788億円を計上した。

 大半は防災・減災、国土強靭化へのインフラ整備(1兆1432億円)だが、消費の落ち込み抑制のため、キャッシュレス決済へのポイント還元事業に2703億円、また同事業が6月末で切れるため、五輪後の9月に始まるマイナンバーカード保有者への買い物ポイント付与に2478億円、「すまい給付金」に1145億円を充てた。

 もっとも、特に消費刺激については、スマートフォン決済やカード保有など対象者がある程度限定されるため効果を疑問視する声も出ており、万全とは言い難い面がある。また、そもそも実質賃金が伸びていないため、消費は長期にわたり冷え込む恐れも否定できない。

 安倍晋三首相は、昨年末も経団連で20年春闘での賃上げについて「大いに期待している」と述べ、7年連続の賃上げを要請した。ただ、賃上げ率はこのところ、世界経済の鈍化から伸びが小さくなっており、大きな回復が見込める状況にはない。

社会保障制度改革を急げ

 消費の低迷には年金への将来不安も少なからず影響している。この点からも、持続可能な社会保障制度への改革は待ったなしである。