神戸東須磨小教員間のいじめを「学校崩壊」の危機と警鐘鳴らすポスト

◆50項目超の嫌がらせ

 神戸市の市立東須磨小学校の教員らの同僚に対する度を超えた嫌がらせを地元新聞が報じ、各週刊誌が後追いしている。

 40代ベテランの女教師Aが30代・中堅の男性教師3人を引き連れて、20代半ばの男性教師Xに職員室内外で執拗(しつよう)にいじめを繰り返していた。AがXに激辛カレーを無理やり食べさせ大笑いしている動画が流出して、教育委員会など地元の教育機関が無視できず実態調査を始めた。

 週刊女性11月5日号によると「(いじめの内容は)関節技をかける、首を絞める、ビール瓶を口に突っ込ませ飲ませる、衣服を破る、乳首に掃除機を当て吸わせる、など50項目を超える」。そのため、X教員は「精神的に不安定な状態が続いています。PTSDのような症状」(Xの代理人)だという。

 週刊文春10月24日号によると、被害者は他に女教師Yや男性教師Zもいて、YとZはAから性行為を強要され、2人が拒否するとそれに近いことをやらされ、その証拠画像を送らされたという。悪ふざけが過ぎる。

 看過できないのは「X先生が受けたイジメ行為の中に、Aが児童に『Xの学級をめちゃくちゃにしたれ』とか『X先生のいうことは聞かんでええ』と話した」(神戸市関係者、同31日号)こと。子供たちのショックはいかばかりか、心の傷となるのが心配だ。

◆保護者説明会で弁明

 同校は保護者説明会を開き、加害者らは出席しなかったが聞き取り内容を紹介した中で、主体格のAは「自分の思いがあって接していたつもりです」と弁解がましいが、他の教員3人は「私の犯した行為は許されることではない」などいじめの事実を認めている。しかし週刊新潮(10月31日号)は、地元県警担当の記者から「県警は立件する方向で動いています」「容疑は暴行、傷害、強要、器物損壊などいくつかあり(中略)年度内に立件されるでしょう」というコメントを引き出している。

 徒党を組んだいじめがなぜ放置され続けたのか、各誌分析の中で、週刊ポスト11月1日号の識者のそれが最もしっくりきた。「日本は“教育の場である学校は介入されず自立しているべき”との信念が強く、トラブルが起きても法律に則って処罰するのではなく学校という閉ざされた空間の中で片付けようとします。暴力やいじめに走る教員が出てきても歯止めが効きにくい。一度いじめや嫌がらせの標的になると、そこから抜け出すのは困難です」

 また「職員室内での立場の強弱が固定化された状況があったのでしょう。いわば“職員室カースト”です。(中略)精神的に未熟な教諭が増えており、今回の事件は氷山の一角」と。そして全国の教育現場では、今「学校崩壊」という現象が起きているというのである。

 一方、週刊新潮10月24日号では、このいじめ事件に対し「なぜ沈黙するのか…日教組」と題し、皮肉を利かせ、職場環境改善に取り組んできた日教組は、悪質な教員を教壇から追放するために立ち上がるべきだ、と言及している。

 今のところ、この問題で日教組は沈黙している。そこで、識者に言わせて「日教組は、外国人児童や性的マイノリティがいじめられたといった、政治が絡む案件にしか興味がない組織で、政治的パフォーマンスに使えないいじめには関わる気がないのです」と批判している。従来、職員室は聖域だったり、日教組の巣窟で、取材もままならなかったが、教育現場の倫理的なタガが外れ、スキャンダルが出てきているという視点で、週刊ポストの指摘に通じる。

◆義務教育の方向失う

 教員の指導力低下、自身の学力低下などが以前から言われてきたが、今度は教師間のいじめが発覚。大きく言えば、わが国の義務教育はその制度の金属疲労とともに、その方向を完全に見失っているのではないか。

(片上晴彦)