楽天携帯参入延期、計画に甘さはなかったか
楽天が10月に予定していた携帯電話事業への本格参入を延期すると発表した。サービスの基盤となる基地局の整備が遅れているためといい、サービス開始の具体的日時も明らかにしなかった。
同社の参入は値下げ競争の起爆剤と期待されていただけに、実に残念である。参入計画に甘さがなかったか。同社には早期に具体的な事業計画を示すことを求めたい。
サービス開始の日時未定
三木谷浩史会長兼社長によると、来年3月末までに東京23区などで3432局の基地局を整備する計画だったが、そのための用地確保が進まず、大幅に遅れている。
また、高価な専用機器を使わずに、データ通信や音声通信をクラウド上で制御する「仮想化」と呼ばれる新技術を、通信ネットワークに全面採用するため、同技術の安定性を確認する必要もあるという。
三木谷氏は会見でサービス開始の具体的な日時を示さず、料金プランについても「政府が思っている以上の引き下げ効果を出せる」と強気の発言を繰り返したものの、本格参入時に発表するとして明らかにしなかった。実に残念というしかない。
楽天の携帯参入は現在、NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの大手3社の寡占状況にある携帯市場で、低価格と大量の会員数を武器に価格低下競争の起爆剤となることが期待されていた。
同市場を主管する総務省も、実質的に後押しする政策を進めてきた。高止まりしていた通信料の引き下げのため、端末代と通信料を分けた「分離プラン」の導入や、スマートフォンなどの2年契約を中途解約する際の違約金の上限を1000円とした省令改正などである。
改正された省令は楽天が参入を発表していた10月から施行する。基地局整備の遅れを気にしていた同省は、早急に整備を進めるよう3回にわたって行政指導を行っていたが、ままならなかった。
大手各社ではドコモとKDDIが、既に6月から通信料を最大で4割下げた新プランを開始。さらに、KDDIは違約金を1000円に引き下げた新料金プランを、ソフトバンクも「2年縛り」と違約金を廃止する新たな料金プランをそれぞれ9月13日から適用すると発表した。
こうした大手の対応からすれば、三木谷氏が会見で強調したように「(楽天の参入表明で値下げの)1次効果は既に出ている」と言えなくもない。しかし、楽天の動向次第でさらなる値下げを示唆していた3社だけに、楽天の延期発表は一層の値下げ競争への期待に冷や水を浴びせた形だ。お膳立てしてきた総務省の期待をも裏切ることとなった。
裏付けある真摯な対応を
楽天は携帯電話サービスについて、最低利用期間や違約金などを設けない方針で、今後発表する料金は「他社がまねすることができないものになる」(三木谷氏)とし、基地局整備も「計画は順調」(同氏)とした。
だが、同社に求められるのは強気の発言でなく、裏付けのある真摯(しんし)な対応である。