アラブ諸国も高い関心


生前退位「歴史的」と強調

 エジプトでは、同国の主要紙アル・アハラム紙やアル・アクバル紙をはじめ、Day 7(デーセブン)、アハラム・ゲイト、マスリヨーム紙、エジプト・インデペンデントなどの電子版でも、4月30日の天皇陛下の御退位と、1日の新天皇の即位式について大きく報じた。テレビでは、国営テレビをはじめ、CBCテレビなどで両式典の様子が報じられた。

 マスリヨーム紙は、新天皇・皇后両陛下が車の中から手を振られている写真を大きく掲載、「菊の王位を受け継いだ」と表現した。譲位による皇位継承は、日本の歴史の中で200年ぶりに行われたことだとも強調した。新元号の令和の意味は「美しい調和」と説明し、新天皇は「憲法に従い、常に国民のことを思い、国民に寄り沿う」と誓った、と報じた。
 英字紙エジプシャンガゼットは1日、30日に天皇陛下が退位のお言葉を述べられた写真を掲載、「日本の天皇は歴史的な退位を宣言した」との表題を付け、生前退位が歴史的であることを強調した。周辺の王制のアラブ諸国には生前退位の伝統がまれであることも理由と思われる。

 また同紙は2日、新天皇、皇后両陛下と皇嗣、皇嗣妃両殿下が一緒に写った写真を載せ、「徳仁殿下が新天皇に成られた」との表題の記事を掲載した。新天皇の言葉を紹介し、「厳粛に感じている」こと、および「日本国と日本国民統合の象徴として責務を果たす」ことを誓ったと紹介している。

 アラブ圏全域で最も影響力があるとされるアラビア語電子版デーセブンには1日、新たに即位した天皇、皇后両陛下と、皇后両陛下と皇嗣、皇嗣妃両殿下が一緒に写った写真をはじめ、新天皇が初めて国民の代表に向かってお言葉を述べられるお姿など10枚ほどの写真を掲載するなど高い関心を示した。写真の中には、新天皇、皇后両陛下の後姿や、リラックスされている平服の姿も織り交ぜて庶民的な姿も紹介している。

 トルコの半国営アナトリア通信は、御退位と御即位、御退位後の上皇陛下がテニスクラブを訪れたことなど、大きく3回に渡って詳細に報道、やはり関心の高さを伺わせた。見出しはそれぞれ「日本の明仁天皇、30年在位の後、退位する」、「日本の新天皇、国民と共にあることを誓う」、「上皇、退位後初めて公の場に」だった。親日国トルコらしい、心のこもった詳細な報道が続いた。

 ヨルダン紙は、ロイター通信の報道を引用しながら、「日本の天皇は、200年ぶりに行った生前退位式で、平和を祈った」との記事を掲載した。副題には「退位(式)は簡素で、シンプルな式典だった」と記し、称賛した。国王を戴くヨルダンは親日国家としても知られている。
(カイロ・鈴木眞吉)