米特殊部隊 対中露へと任務をシフト
サイバー戦能力も強化へ
米国防総省は、2001年同時多発テロ後のテロ組織との戦いから、中露のような敵対する大国へと任務の焦点を移しており、それとともに米軍特殊部隊の任務にも変化が起きている。それに伴って米軍特殊作戦軍(SOCOM)では、特殊部隊の任務を見直し、中露などで拡大が進む陸軍、海軍と戦うための新たな指針の作成が進められている。
新指針によると、SOCOMは、サイバー戦、情報戦、ネットを使ったプロパガンダ作戦への関与を強化し、同盟国でのこれらの作戦能力の訓練をも担うことになる。今後、トーマス司令官の承認を受けるという。
同時テロ以降、特殊部隊は、米国主導の世界各地での「テロとの戦い」の最前線に立ち、01年からイスラム過激派組織タリバンとアルカイダとの戦闘を主導し、14年からはシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の「カリフ制国家」と戦ってきた。しかし、マティス前国防長官が作成に深く関わった国防総省の国家防衛戦略では、テロ組織との戦いから、従来の敵対する大国との戦いへのシフトがすでに指摘されている。この新戦略の下では、欧州とアジアが米軍にとっての「重要戦域」に復活、中東の重要性は現在よりも低下することになる。
SOCOMは陸軍、海軍、空軍、海兵隊の特殊部隊から成る。01年の4万5000人から増員が進み、現在は約7万人を擁する。
すでに世界での従来の特殊部隊主導のテロ対策は縮小傾向にある。
トランプ大統領は昨年末、ISの支配地の奪還を受けて、特殊部隊でほとんど占められているシリア駐留米軍2000人の完全撤収を表明、ホワイトハウスは21日に少なくとも200人を残留させることを明らかにした。
アフリカ軍は20日、今後3年間で部隊を10%縮小することを発表、約300人の特殊部隊員がアフリカから撤収する。
SOCOM当局者らによると、過激派対策は今後も任務の一部だが、サイバー・情報作戦という従来とは違う任務に比重を置くようになる。国防総省の特殊作戦・低烈度紛争部長のオーエン・ウェスト氏は「戦争の本質は変わっていないが、戦争の性格はこの15年間で大きく変わった」と、小規模で短時間に問題の解決を可能にする特殊部隊の重要性が高まっていることを強調した。
(ワシントン・タイムズ特約)