ベネズエラ危機、支援物資搬入と出直し選挙を
経済が破綻状態にある南米ベネズエラで、独裁支配を強める反米左派のマドゥロ大統領が手段を選ばない権力維持の動きに出て危機的状況が続いている。暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長を支持する米国などの国々は、マドゥロ氏の退陣を求めるとともに自由な選挙の早期実施による民主主義の回復を要求しており、わが国もグアイド氏を支持している。
中露がマドゥロ政権支持
これまでベネズエラ情勢をめぐって国際社会は、マドゥロ政権を支持するロシア、中国などと、グアイド氏を暫定大統領として承認する米国、カナダ、ブラジルなど14の米州諸国、欧州連合(EU)諸国など冷戦時代のように二つに分かれた。
米国などがマドゥロ氏に退陣を要求するのは、権力維持のため人権侵害や野党への弾圧を行いながら独裁を強化していることを見過ごすことができないからだ。
これらの国々はグアイド氏の求めに応じて救援物資を困窮するベネズエラ国民に届けようとしたが、マドゥロ政権によって阻まれている。海上封鎖、国境封鎖などの非常手段はコロンビアとの国交断絶に及んでいる。
トラックでの搬送ができないため、民衆がボランティアで荷物を持ち徒歩で運び入れようとしたが、治安部隊がさえぎった。抗議した人々の中に死傷者も出ている。暫定政権による救援物資の国民への配給を妨害して、自らの権力を延命させようという自己中心的な措置であり遺憾である。
ベネズエラでグアイド氏が暫定大統領就任を宣言したのは、マドゥロ氏の1月の2期目の大統領就任を認めず、大統領は不在の状況にあるとして同国憲法に則(のっと)って行ったものだ。昨年5月の大統領選はマドゥロ政権によって野党指導者が排除されており、公正な選挙ではない。
それ以前には、社会主義的政策により経済破綻を来したため、生活に窮した民衆が抗議デモを行ったのに対し、マドゥロ政権は弾圧を加えている。国連人権高等弁務官事務所は、野党弾圧、拷問など凄惨(せいさん)な人権侵害を報告するなど、国際社会から重大な懸念が示されていた。
ベネズエラでは、1999年に始まるチャベス前政権から反米外交路線に舵(かじ)を切り、社会主義政策を取り入れた。その失敗は明らかになっている。
しかし、社会主義体制の維持を支援するキューバ、軍事的関係を強化するロシア、石油事業に巨額の投資を行ってきた中国などは、ベネズエラ国民が生活困難な状態になり、数百万人も難民となっているにもかかわらずマドゥロ氏の独裁支配を容認している。
民主主義を回復させよ
特に、軍事的拠点を南米に求めているロシアは戦略爆撃機をベネズエラに派遣。トランプ米政権は軍事介入を示唆するなど緊張が高まった。
重要なのは、国民を困窮から救援し、民主主義を回復させることである。中露とキューバの支援を受けるマドゥロ政権の下では絶望的だと言わざるを得ない。暫定政権の下で野党を排除しない出直し大統領選挙を実現させるべきである。