沖縄県民投票、辺野古移設めぐる混乱を懸念
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非を問う県民投票が告示され、24日に投開票される。
昨年10月に条例制定
県民投票は、埋め立てについて「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択から選ぶものだ。法的拘束力はないが、最多得票の選択肢が全有権者の4分の1に達した場合、知事は首相と米大統領に結果を通知する。県の有権者数は約115万6000人なので、4分の1は約29万人となる。
県議会では昨年10月、今回の県民投票実施のための条例が社民、共産両党など県政与党の賛成多数で可決、成立した。辺野古移設に反対する玉城デニー知事ら「オール沖縄」勢力には、移設阻止の民意を示して移設を進める政府に対抗する狙いがあろう。
しかし辺野古移設など国の安全保障政策は、沖縄県民だけでなく全ての日本国民の生命や財産を守るためのものだ。この是非を問うために、県民投票を行うことが適切だとは言えまい。反対票が多数となれば、国と県との対立が激化して混乱が拡大することが懸念される。
辺野古移設は普天間飛行場の危険性を除去しつつ抑止力を維持するためのものだ。「オール沖縄」による移設への抵抗は、無責任のそしりを免れない。
県民投票条例は当初、賛否2択で成立し、これを不服とした宜野湾など5市が不参加を表明。「どちらでもない」を加えた3択とする改正条例の成立を受け、全41市町村で実施されることになった経緯がある。
それでも自民党沖縄県連は危険性除去の観点が投票の選択肢に反映されていないことを問題視している。普天間飛行場は住宅密集地に囲まれ、「世界一危険な飛行場」と呼ばれる。
2004年8月には、近くにある沖縄国際大の構内に米軍ヘリコプターが墜落。17年12月には隣接する小学校に米軍ヘリの窓枠が落下するなどの事故も起きている。周辺住民を巻き込むような大事故が発生すれば、日米安保体制にも重大な影響を与えることになろう。
県民投票の結果にかかわらず、政府が辺野古移設工事を進めるとしているのは当然だ。防衛省沖縄防衛局は昨年12月に土砂投入に着手し、今年3月25日からは新たな区域でも土砂を入れると県に通知している。
辺野古移設で普天間飛行場が返還されれば、その跡地利用は沖縄振興にもつながるだろう。一日も早い実現が望まれる。
日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。北朝鮮は昨年6月の米朝首脳会談後も、核・ミサイル開発をひそかに進めていたとみられている。中国は覇権主義的な海洋進出を強めている。沖縄は朝鮮半島や中国をにらむ戦略的要衝であり、日本だけでなく、東アジアの安定のためにも沖縄に駐留する米軍の存在は重要だ。
基地負担軽減を進めよ
政府は辺野古移設への県民の理解を得られるように努めなければならない。
そのためには、抑止力を損なわない範囲で辺野古移設以外の基地負担軽減も進めていく必要がある。