沖縄統一地方選26市町村で実施、保守系が微増
翁長雄志氏の死去の影響なし、名護市は保革同数に
統一地方選が26市町村で実施された。翁長雄志(おながたけし)知事の死後、初の県内選挙となったためその影響度が注目されたが、米軍基地問題を抱える宜野湾と名護の両市議選で革新が議席を減らす結果となった。(那覇支局・豊田 剛)
宜野湾市は与党全員当選、石垣市は自衛隊配備に弾み
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設工事が進む名護市議選(定数26)は、今回の選挙から定数が1減った。移設を事実上容認する渡具知武豊市長を支持する自公与党と、移設に反対する野党が13人ずつ当選したため明確な勝者はない。
ただ、反市長派が1議席減らした。野党議員の中にも、市長に是々非々の立場の議員もおり、市政運営は流動的な情勢だ。
普天間飛行場を抱える宜野湾市議選(定数26)では、与党候補が改選議席14から二つ伸ばす全16人が当選を決め、今月30日に投開票される同市長選に向けて弾みをつける形となった。市議選各候補は、市長選に与党側で立候補する予定の前副市長松川正則氏(64)=自民、公明推薦=、野党側県高校PTA連合会前会長の仲西春雅氏(57)とそれぞれ街頭演説に立つ“セット戦術”を展開した。
また、陸上自衛隊配備が争点となった石垣市議選(定数22)では、与党が過半数の13議席を獲得した。自衛隊配備の現行計画に賛成する議員はちょうど半数11人にとどまっている。ただ、これまで慎重な姿勢を示してきた公明(2議席)は今年3月の市長選で、原則賛成の立場を示唆している。中山義隆市長は、「自衛隊配備の民意は出た」と結果を評価。自衛隊建設予定地の半分を占める市有地の処分について、年内に議会の判断を仰ぐ考えを示した。
統一地方選の結果について沖縄問題に詳しい評論家の篠原章氏は、「翁長氏の死去による“弔い”の要素はなく、県民は冷静な判断をした」と分析した。
若手市議2人に聞く
名護市議 仲尾ちあき氏
渡具知市長に市民の声届く
――トップ当選を果たした今の心境は。
今年2月の市長選と同時に行われた市議選補選では、市長とビジョンが一緒でセット戦術が奏功した。今回は、子育て支援など若者世代の有権者から強い期待を感じた。4年前の市議選は辺野古移設に賛成か反対の2択のような選挙だったが、今回は誰が市民のために仕事をしてくれるのかを判断する選挙になったと思う。
――有権者は何を求めていると感じたか。
豊かな暮らしと定住できる街づくりだ。そのためには、雇用を促進し、経済を発展させることが必要となる。市長選、市議選から期間が短い中での知事選では、その勢いを持続させたい。
――渡具知武豊市長が誕生して、名護市はどう変わったか。
8年間、基地問題に専念していた前市長とは違い、市民の声が届き、それを反映してくれる。具体的にはごみ袋の料金が半額になった。9月からは学校給食費と保育料が無償化された。また、来年4月には高校生の医療費が無料になる。こうしたことを通して、暮らしやすさが実感できる。
――辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前の抗議活動について。
反対運動家が生活道路をふさぐことにより、辺野古区民は落ち着いて生活できない状況が続いている。通勤や通学の妨げにもなっている。
宜野湾市議 平安座武志氏
普天間の移設推進を訴える
――新人の保守系候補の中でも上位で当選した。
改めて職責の重さを感じる。支援していただいた市民に感謝の思いで一杯で、期待を裏切らない活動をしていきたい。
――普天間飛行場の辺野古移設推進を公約に掲げた唯一の候補だった。市民の反応はどうだったか。
センシティブな問題だけにやりにくい部分もあったが、反応は良かった。苦情や嫌がらせの電話は一切なく、逆に激励を受けた。これからも普天間飛行場の早期移設を堂々と訴えていきたい。
――今後4年間の抱負は。
私利私欲をなくして「市政に信頼、将来世代に責任」をモットーに努力精進し、市民の意を汲(く)んだ政治活動を展開していきたい。
――知事選と宜野湾市長選の同時選挙に期待することは。
普天間移設問題は、国、県、市が一体となって解決する問題であり、知事選と市長選では2人の保守系候補を当選させ、国と一体になって早急に問題解決していきたい。私も早期移設を実現するため、志を同じくする。議員仲間を募って行動し、両候補者を全力でバックアップしていく。