「一帯一路」逆風の兆し、アジア各国反発
中国が精力的に進めている経済圏構想「一帯一路」が、重大な岐路に立たされている。アジアの一部の国で、融資契約が不透明、インフラ開発後の負担が重いなどと反発が強まり、アナリストらからも、構想は中国のアジアでの政治的、経済的影響力拡大の意図を覆い隠すためのものだという指摘も出ている。
経済負担懸念 見直し検討も
中国は、一帯一路構想はインフラ開発を必要としているアジア、アフリカなど開発途上国に、善意に基づいて互恵的に資金、技術を提供するものだと主張してきたが、パキスタン、スリランカ、マレーシアなどは、中国のこの主張に否定的だ。
アジア問題に詳しいジャーナリストのハンフリー・ホークスリー氏は「この1カ月間、中国は巨額の小切手で操作できると考えていた国々から露骨な警告を受けている」と指摘、構想に対して逆風が吹き始めていると主張した。
開発計画が中国企業に有利であることや計画の選定方法に不満の声が上がるとともに、数十年に及ぶ計画が中国の海外軍事基地建設につながるのではないかという懸念が生じている。
アジア各国で最も懸念されているのは、融資金利が高く、返済に伴う経済的負担が大きいことだ。
マレーシアのマハティール首相は先月、財政悪化を理由に、中国の支援を受けた200億㌦超の開発計画の中止を発表、8月20日には、北京での習近平国家主席との会見の場で、一帯一路について「新植民地主義」と警戒心をあらわにした。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員ブライアン・ハーディング氏は「マレーシアの一件で、東南アジア全域に中国との取引を警戒する動きが出てきた」と、一帯一路に対する見直しの機運が高まっていることを明らかにした。
スリランカは昨年、15億㌦の負債の返済が滞り、南部ハンバントタ港の運営権を中国企業に99年間貸与する契約の締結を強いられた。
パキスタンでは、腐敗撲滅を訴えて政権を獲得したカーン新首相が、中国による大規模なインフラ投資計画を縮小する可能性に言及した。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、カーン氏は、南部グワダル港、道路・鉄道の整備など620億㌦に達する「中パ経済回廊(CPEC)」計画の見直し、再交渉の意向を示した。
(ワシントン・タイムズ特約)