ロシア、武器売却で米同盟関係にくさび


 ロシアは迎撃ミサイルS400の輸出を精力的に進めている。輸出相手国には米国の主要同盟国も含まれ、ロシアは、武器輸出を通じて、米国と同盟国との間にくさびを打ち込む狙いがあるものとみられている。

迎撃ミサイルS400の輸出 精力的に進める

 S400は、2007年の実戦配備後すぐに、ロシアのミサイル防衛システムの中核を担うようになり、米国のパトリオット(PAC3)、「高高度防衛ミサイル(THAAD)」に匹敵する能力を持つとされている。武器輸出を意欲的に進めるロシアにとっては重要な輸出品だ。

 シリアではロシア軍基地とアサド政権防衛を担っており、ロシアの武器輸出企業ロソボロネクスポルトのアレクサンデル・ミケーエフCEO(最高経営責任者)は8月、タス通信で、「需要はシリアでの出来事以降、高まっている」と指摘、複数の国と売却交渉を進めていることを明らかにした。

 ロシアの軍事誌「モスクワ・ディフェンス・ブリーフ」によると、アルジェリア、ベラルーシ、イラン、ベトナムなども関心を示し、売り上げは今後15年間で300億㌦に達する見込みだという。

 米国務省は、S400の導入阻止へ制裁も辞さない構えだ。それに対しロソボロネクスポルトは最近、米ドルでの決済をやめ、現地通貨で取引することを発表した。

 中国は、米国によるTHAAD韓国配備に対抗するためS400を導入する。南シナ海への中国の進出を阻止したい米国と同盟国を牽制(けんせい)する狙いもあると指摘されている。

 ロシアはさらに、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコにS400を売却。米議会は、導入阻止へ、最新鋭ステルス戦闘機F35のトルコへの売却を凍結するなど、強気の姿勢だ。

 ロシアはエジプト、サウジアラビアなど米同盟国とも交渉を進めており、米軍事アナリストらは、S400導入でロシアの中東での影響力が強まると懸念を表明した。

 NATOの元連合軍最高司令官のジェームズ・ストラブリディス退役海軍大将は昨年、ニュースサイト「ブレイキング・ディフェンス」で、同盟国のS400導入について、「相互運用能力が阻害され、サイバー攻撃への脆弱(ぜいじゃく)性が高まり、ロシアに重要な情報が流出し、友好国への技術移転を制限せざるを得なくなる」と懸念を表明していた。

 トンプソン国務次官(軍備管理担当)は、ロシアが米国の敵国、友好国双方へのS400売却を精力的に進めるのは、米国と西欧の覇権に対抗するためのプーチン大統領の計画の一環と指摘、「ある国の防衛設備を導入するということは、ただ機器を購入するだけでなく、関係を築くということでもある」と強調した。

 とりわけ難しいのはインドだ。6日に行われた米印初の外務・国防閣僚協議2プラス2ではインドのS400導入計画についても話し合われ、ポンペオ米国務長官は「重要な戦略的パートナー」インドへの制裁の可能性に言及した。

 ロシアの外交政策アナリスト、ウラジーミル・フロロフ氏は「S400には、商業的側面と地政学的側面がある。長年にわたってロシアの影響力を拡大する道が開けた」と、ロシアにとってのS400の重要性を強調した。

(ワシントン・タイムズ特約)