速度調整が必要な南北鉄道構想
成否のカギは北の「非核化」
19世紀文明の産物である鉄道が21世紀にも大きな関心事となっている。文在寅大統領が8月15日の祝辞で東北アジア6カ国と米国が関わる「東アジア鉄道共同体」構築を提案し、「東北アジア多者間平和安保体制へ向かう出発点になるだろう」と述べた。
鉄道は欧州では産業革命を加速させ、米国には物理的統合を与えた妖術師だ。韓半島でもそれに似た魔法を繰り広げることができるだろうか。少なくとも文在寅政府は固く信じているようだ。大統領が直接「鉄道共同体」に言及したことから、政府の実務陣は分断されたままの京義線・東海線をつなぐ南北協力事業を急ごうとしている。
文在寅政府が初めて南北鉄道の夢を見た政府ではない。朴槿恵政府もユーラシア鉄道に注目していた。違う点は意欲だ。文大統領は5月、日本で李克強中国首相とソウル~新義州~中国をつなぐ鉄道事業に対する意見を交換している。
共に民主党の宋永吉議員が以前、南北鉄道構想について、米国の対北制裁を問題視し、韓米間に微妙な波紋を広げたこともあった。今回の“鉄道共同体”は聞き流すにはあまりにも重い発言という意味だ。
逆に心配にもなる。1期しか務められない政権はその期間内で成果を出そうとして猛スピードで事業を進める。だが猛スピードは脱線につながりやすい。国家の安保政策が脱線すれば国家的災難になる。
幸い、大統領は祝辞でくぎを刺した。「完全な(北朝鮮の)非核化とともに、韓半島に平和が定着しなければ本格的な経済協力は行われない」と。合理的な線だ。その線を越えないように繰り返し気を付けることだ。
南北鉄道構想の成否を分けるカギは結局、北朝鮮の「先に非核化」が実行されるかどうかに懸かっている。一方的な推進は空しくて危険だ。拙速に対北事業の成果を欲したり、猛スピードでそれを行えば、韓国民が韓米同盟のような国家安保の貴重な資産を失うことになるかもしれない。政府は速度調整をしなければならない。
南北鉄道はすなわち安保問題である。東北アジアの地政学的な危険性が絡まっている。南北鉄道が平和の鳩でなく“災難の鳩”に化けることは断じてあってはならない。道をよく探すことだ。
何より、国民と緊密に疎通しながら進めなければならないだろう。
(李承鉉論説顧問、8月21日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。