沖縄慰霊の日、平和維持する不断の努力を
沖縄県はきょう、第2次世界大戦末期の沖縄戦での全戦没者を追悼する「慰霊の日」を迎える。戦没者の冥福を祈るとともに恒久平和への誓いを新たにする日としたい。
沖縄戦で20万人が死亡
沖縄戦では激しい戦闘で、日本軍、米英軍主体の連合国軍、そして民間人を合わせて約20万人が亡くなった。この中には県外出身の日本軍兵士約6万6000人のほか、当時日本の植民地だった朝鮮半島や台湾の人たちも含まれる。
最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園ではきょう、県主催の沖縄全戦没者追悼式が開かれる。これに関連して、台湾の李登輝元総統はあす同公園で行われる「台湾出身者慰霊顕彰祭」に参加する。沖縄県民だけでなく、国民一人ひとりが日本と東アジア、そして世界の平和を祈念したい。
日本を脅かす北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐっては、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝首脳会談で「朝鮮半島の非核化」で一致した。しかし具体的な時期や方法は決まっておらず、北朝鮮の非核化が実現するかは不透明だ。
沖縄県・尖閣諸島の領有権を不当に主張する中国も、尖閣奪取に向けた動きを強めている。中国公船による領海侵入のほか、今年1月には中国海軍の潜水艦とフリゲート艦が尖閣周辺の接続水域に進入した。
こうした動きに対応する上で日米同盟は不可欠だ。日米同盟は日本だけでなく、アジア太平洋地域、世界全体の安定と繁栄のための「公共財」と言われる。中でも、要衝である沖縄に駐留する米軍の存在は重要だ。
沖縄県の翁長雄志知事は昨年の追悼式で「辺野古に新たな基地を造らせないため、今後も県民と一体となって不退転の決意で取り組む」と述べ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を阻止する姿勢を示した。しかし、移設は米軍の抑止力を維持しつつ沖縄の負担軽減を図るものだ。
普天間飛行場は市街地の中心に位置し、世界で一番危険な飛行場と言われている。昨年12月には、隣接する小学校に米軍ヘリコプターの窓が落下した。万一、大事故が発生すれば日米安保体制を揺るがす事態となりかねない。東アジアの情勢が不安定化する恐れもある。
辺野古移設をめぐって、政府は8月中旬にも埋め立て海域への土砂投入に着手する。移設を着実に進めなければならない。
これに加え、政府は沖縄の宮古島に陸上自衛隊の警備部隊や地対艦誘導弾などのミサイル部隊を新たに配置する計画を進めている。2018年度末までに警備部隊を約380人、19年度以降にミサイル部隊を約270人配置する。
宮古島-沖縄本島は、中国が有事に米軍の接近を阻止する防衛ライン「第1列島線」上にあり、中国軍が太平洋に進出するルートになっている。自衛隊配備で中国を牽制(けんせい)すべきだ。
抑止力の一層の向上を
平和を維持するには不断の努力が求められる。政府は米国との連携を強め、抑止力の一層の向上を図る必要がある。