露、極超音速ミサイル誇示
米軍、開発の遅れに警鐘
ミサイル防衛網をかいくぐり、1時間以内に地球上のどこにある標的でも攻撃できるとされる通常兵器、極超音速ミサイルの開発で米国は、ロシアと中国に後れを取っている。ロシアは新型の極超音速ミサイルを軍事パレードで公開、中国も独自のミサイル開発を精力的に進めている。
米国は「即時全地球打撃(PGS)」計画の下で極超音速兵器の開発を進めてきた。しかし、相次ぐ実験の失敗で、長距離ミサイル防衛網や次世代大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発へと関心が移っている。米国による最新の極超音速兵器開発としては、国防高等研究計画局(DARPA)の2011年のHTV2ファルコンと10年の空軍のスクラムジェット極超音速兵器、X51ウェーブライダーがあるが、初期開発段階にとどまっている。
シンクタンク、レキシントン研究所のダニエル・グール副所長は「ナショナル・インタレスト」誌で「極超音速兵器によって、米国と主要競合国の間の通常兵器勢力バランスが劇的に変わる可能性がある」とその脅威を強調、特に、空母、強襲揚陸艦、補給艦などへの攻撃に効果的と訴えた。
ロシアのボリソフ国防次官は5日、ズベズダ・テレビで、戦闘機ミグ31に搭載される極超音速ミサイル「キンジャール」の配備を発表。「防空網を突破する能力を持つ最先端の兵器であり、非常に強力。戦闘で力を発揮する可能性を秘めている」とその能力の高さを誇示した。
中国も昨年、極超音速ミサイルDF17の試験発射に成功。米情報当局は試射の実施を把握しているが、実戦配備の時期については明らかにしていない。最新の報道では、射程は最大で約2000キロ、20年にも配備される可能性がある。
中露のこれらの動きに、米軍上層部は関心を示しており、極超音速兵器の開発で米軍が後れを取っていることに警鐘を鳴らしている。
次期太平洋軍司令官のフィリップ・デービッドソン海軍大将は先月、上院軍事委員会での承認公聴会で、極超音速兵器開発について中国に後れを取っていることを認めた上で、「直ちに追い付かねばならない。開発の速度を上げなければならない」と開発推進の必要性を訴えた。
ミサイル防衛局(MDA)のグリーブス局長も下院公聴会で中露の極超音速兵器開発について触れ、「高速、誘導可能、低高度という要素が合わさって、防衛網による迎撃が困難になっている」と警告した。
極超音速兵器開発での遅れは来年度の国防総省の予算要求にも反映されており、DARPAでの開発計画予算として2億5600万ドルが要求されている。
(ワシントン・タイムズ特約)