9月短観、一日も早い経済対策実行を


 企業の景況感は総じて横ばい。円高の影響は業種により異なりまだら模様で、先行きは円高が重しとなり慎重姿勢を崩せない――日銀発表の9月短観から見える状況である。

 金融は極端に緩んでいるのに設備投資が冴(さ)えないのは、円高とともに国内需要の不足がある。一日も早い経済対策の実行が待たれる。賃上げを含む、非正規社員の正社員化など雇用改革も待ったなしである。

 円高で景況感改善せず

 日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業がプラス6で2四半期連続の横ばい、大企業非製造業はプラス18と3四半期連続で前回調査を下回った。

 製造業では、熊本地震の影響一巡と世界経済の先行き不安の後退が景況感を下支えしたものの、1㌦=100円台の円高が重しとなり、業種間で差が出た。非製造業は国内消費の低迷や訪日外国人客の高額品購入の減少で小売りが冷え込む。

 3カ月後の見通しも、大企業製造業が横ばいの他は、大企業非製造業、中小企業の製造業、非製造業とも悪化を見込む。さらなる円高の進行を警戒しているということであろう。

 2016年度の大企業製造業の想定為替レートは1㌦=107円92銭。前回の6月調査から英国の欧州連合(EU)離脱決定後の市場動向を反映して3円以上円高方向に修正したが、現在は101~103円台とさらに高い水準で推移している。

 16年度の経常利益計画は大企業製造業で前年度比14・6%減と前回調査(同11・6%減)より厳しくなると判断、大企業非製造業も同4・2%減(前回調査3・4%減)と下方修正した。

 こうしたことから、大企業全産業の16年度設備投資計画は前年度比6・3%増と前回調査とほぼ変わらないが、大企業製造業では小幅ながら下方修正され、中小企業(全産業)は同9・0%減である。円高を背景に、企業が先行きをいかに慎重に見て強気になれずにいるかを示している。現在の円高水準が定着するようであれば、輸出企業を中心に業績予想、設備投資計画はさらに引き下げられ、景気や消費の足を引っ張る恐れもある。

 今回の短観は金融機関の貸し出しの積極性を示す指標が、バブル期以来の高水準になったことを示した。それにもかかわらず、企業の設備投資計画は前述の通り盛り上がりを欠くありさまである。

 設備投資を掘り起こす狙いの日銀のマイナス金利政策が想定通りに進んでない証左だが、2%物価目標の達成にこだわる必要もないということであり、問題の根源が国内需要の不足にあることを示している。一日も早い経済対策の実行が待たれる所以(ゆえん)である。

 雇用環境改善が不可欠

 同時に、国内総生産(GDP)の約6割を占める消費を促す上でも、賃上げなど雇用環境の改善は欠かせない。政府は4割近くに達する非正規雇用の正社員化など「働き方」改革とともに、将来不安を軽減する年金をはじめとした社会保障制度改革を着実に進める必要がある。