中国企業に制裁、対北包囲網強化を進めよ
国連安全保障理事会が強く非難した9月の北朝鮮による5度目の核実験を受け、米財務省は中国企業と幹部4人に制裁を科した。司法省も同社と4人を刑事訴追した。
対北制裁の「抜け穴」を許さない米国の強い姿勢を見せたことが評価される。
米国内の資産を凍結
米財務省は北朝鮮による大量破壊兵器の拡散に関与したとして、中国企業1社と幹部4人の米国内にある資産を凍結。さらに同社との取引を禁じる独自制裁をも発表した。核・ミサイル開発を加速させている北朝鮮への国際包囲網が一段と強化されたわけだが、北の核開発阻止への米政府の強い決意が示された意義は大きく、その効果が期待される。
オバマ米政権は2月、北朝鮮と関係のある第三国の個人、団体をも金融制裁の対象に含める対北制裁法を成立させた。今回の制裁措置の発動は同法によるもので、対北制裁の抜け穴封じに米政府が乗り出したものと言える。
北朝鮮の貿易総額の約9割は中国が占めている。両国間の貿易に何らかの措置を講じない限り、それが対北制裁の抜け穴となって制裁の効果が上がらない状態にあった。
今回、米政府が制裁を科した中国企業は、遼寧省丹東市に拠点を置く貿易会社「丹東鴻祥実業発展」だ。米政府は、同社や関連企業が持つ25の銀行口座を差し押さえるよう中国当局に要請した。
国連安保理は9月に北朝鮮の5回目の核実験を「国際平和への脅威」として強く非難する報道機関向け声明を出した。声明は、北朝鮮に核実験や弾道ミサイルの開発を禁じる安保理決議を「著しく無視した」と指摘し「違反の深刻さを踏まえ、安保理は迅速に適切な措置を取る」と警告した。この声明が米国を後押しし、今回の制裁につながったと言えよう。
われわれが注目するのは、対北制裁でどこまで米中協力ができるかだ。米政府からの圧力のためか、中国公安当局もこの貿易会社の幹部を拘束し、捜査していると伝えられる。
1月の核実験に伴う3月の国連の対北制裁決議後に減少した中朝貿易額は、6月になって増加している。この状態が続けば対北制裁が有名無実のものとなる。米政府は、北朝鮮の最大の貿易相手国として中国が暴走阻止へ影響力を行使するように促し続けるとしている。
しかし、北朝鮮は幽霊会社を新たに立ち上げたり、仲介人を雇ったりするという手口を使える。また、国連制裁は庶民生活のための石炭、鉄、鉄鉱石などの輸出を認めており、それが抜け穴の拡大につながる可能性が高い。
中国には期待できない
中国は国境を接する北朝鮮の体制が不安定になることを望んでおらず、対北制裁を骨抜きにしてきた。
現在も北朝鮮の核開発阻止よりも、地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備反対に力を注いでいる。対北国際包囲網に中国が参加することは期待薄とみるべきだ。