性犯罪厳罰化、速やかな法改正が必要だ


 法制審議会(法相の諮問機関)は、性犯罪の罰則を強化する刑法改正要綱骨子を金田勝年法相に答申した。

 要綱では強姦罪の法定刑について下限を懲役3年から5年、強姦致死傷罪も下限を懲役5年から6年に引き上げ、刑法の中で最も重い罪の一つとする。

審議会が改正要綱を答申

 性犯罪は女性の尊厳を踏みにじり、取り返しのつかない傷を与えるので「魂の殺人」と呼ばれる。だが、これまで強姦罪の刑期の下限は強盗罪の5年よりも短かった。物を取る罪よりも「魂の殺人」の方が刑が軽いのは理不尽であり、要綱に沿った法改正を速やかに行うべきだ。

 また要綱では、「強姦」の考え方も見直す。対象行為を一般的な「性交」に限定していたのを、性交に類する行為も含む「性交等」とする。これにより、男性も強姦罪の被害者として扱えるようになる。強姦罪の根幹的な見直しは、1907年の刑法制定以来初めてとなる。

 さらに、性犯罪を被害者の告訴がなくても検察官の判断で起訴できる「非親告罪」とした。親告罪の場合、犯罪者を処罰するかどうかの判断が被害者に委ねられているため、負担が重いと指摘されていた。「泣き寝入り」すれば性犯罪者を野放しにすることにもなりかねず、非親告罪化は妥当だ。同時に被害者に不利益を生じさせない仕組み作りが求められる。

 厳罰化は、2014年に松島みどり法相(当時)の指示で検討に着手した。松島氏が同年9月、法相就任時の記者会見で強姦致死傷罪の「無期または5年以上の懲役」に比べ、強盗致傷罪の「無期または6年以上の懲役」の方が「最低刑が重い」と問題視したことがきっかけだ。

 それとともに、国民の強い処罰感情を反映したものだと言えよう。11年12月に静岡の裁判員裁判で、強姦など9件の性犯罪に問われた35歳の男に「懲役50年」の判決が下された。

 異例の量刑とされたが、裁判員は「あまりにも酷い犯行で妥当な判決」と述べている。裁判員裁判では性犯罪により重い量刑が選択される傾向がある。

 注目されるのは、子供を性犯罪から守るため、要綱に家庭内での性犯罪厳罰化を盛り込んだことだ。これまでは児童福祉法の適用で軽い罪で済んでいたケースも強制わいせつ罪などに問えるようにする。

 今年上半期(1~6月)に全国の警察が摘発した児童虐待事件は過去最多の512件(前年同期比36%増)で、このうち性的虐待は70件に上る。性的虐待を受けた子供は極めて深刻な心の傷を負う。厳罰化は当然だと言えよう。

厳しい姿勢で臨むべきだ

 性犯罪をめぐって、例えば米国は性犯罪出所者の氏名や顔写真などをインターネットで公表し、転居すれば警察から学校や自治組織に通告する制度を整えている。

 一部の州は、再犯の恐れの強い対象者に電子足輪を強制着用させ、全地球測位システム(GPS)で監視する。韓国やカナダでは、裁判所が出所者に性欲を抑制する薬物投与を命令できる。日本も厳しい姿勢で臨むべきだ。