日印連携しアジアに平和を
挑発繰り返す中朝パ
冷静過ぎるメディアの報道
北朝鮮がいよいよ日本の経済的水域圏内にミサイルを飛ばしてきた。日本国政府もメディアも極めて冷静に対応した。メディアがこのような危機に対し国民に大袈裟(おおげさ)に報道しないということは良いことなのか、私は多少疑問に思う。確かに大袈裟にあおることは決して良いことではないが、ある程度真実に基づいて北朝鮮の挑発的行為に対する危機感を正確に伝えないというのは、逆に日本人の安全保障と危機管理に対する感覚を麻痺(まひ)させているように感じる。また中国による尖閣諸島に対する不法行為についても同じことが言えるのではないだろうか。
インドに対してもパキスタンからテロ活動などを支援していたり、カシミール地方などにテロリストを潜入させているケースが少なくない。また中国による国境侵入も絶えていない。これらの行動に対してインド政府は毅然(きぜん)とした態度を取り、特にパキスタンに対して、やられたらやり返すという姿勢は強く発揮している。だが全体としては日本とは正反対に、どちらかと言えば国民が声を上げ、メディアが危機的状況について的確かつ迅速に報じることで政府を側面から支えている。この辺はメディアが政府の足を引っ張るような日本との違いを感じる。
日本は、国境問題は存在しない、という立場だ。なぜならば尖閣諸島は日本固有の領土であり、従って中国を含めいかなる国ともこの問題に関しては問題にすること自体必要ないという立場である。しかし残念ながら相手はそう思ってはおらず、あらゆる手を尽くして自分たちの主張を正当化し、それを現実化するための行動を取っている。特に最近は漁民と称する人々でさえも武装して日本の領海を侵している。
パキスタンと北朝鮮が中国の軍事的、政治的、経済的支援無しに成り立たないことは周知の事実である。パキスタンと北朝鮮は同時に核保有国でもある。その核の技術は中国からの拡散であることを認識する必要がある。このように点を線で結ぶと、この三角関係がアジアの平和と安定を脅かす大きな要因となっており、まさにアジアの悪の枢軸であると言える。この現状を打破するには、もはやアジアに対する関心度が停滞し、世界の警察官役を放棄することを宣言したアメリカに頼り、期待しても限界があるように思う。
インドの北東部およびカシミール地方に対して不安の要素をつくり続けるパキスタンと中国、そして日本の尖閣諸島や東シナ海および南シナ海などにおいて度重なる挑発を繰り返す中国や北朝鮮に対しては、アジアの問題としてアジアの国々が連帯し、平和構築のために共通の認識と相互信頼を構築することが急務である。
しかし現段階では安倍政権が尽力しているにもかかわらず、むしろ中国が先手を打ってアジア各国にさまざまなアメとムチを使い、日本やインド、アメリカの戦略の切り崩しに成功している。ビルマ(ミャンマー)やインドシナ諸国並びにタイなどの国内事情から、中国との関係を無視できない事情があるとはいえ、そこにはやはり中国の計画的、戦力的そして継続的な働きが功を奏している。
だから本来であれば最も自分たちの安全保障や経済発展に直結する南シナ海問題でも、中国に対して堂々たる姿勢を取るどころか、むしろ日本にも中国にも良い顔をして、双方から援助を引き出そうと狡猾(こうかつ)に動く国もある。だから東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々は自分たちの問題であるにもかかわらず、中国を批判する共同コミュニケすらまとまらないのが実態である。特に最近のASEANプラス中国の共同宣言は領海領土問題に関しては、当事国同士で解決し、他の国が干渉する問題ではないという立場で、日本やアメリカ、インドなどの関わりを牽制(けんせい)するような立場を取っているのは残念である。
8月上旬、中国の王毅外相がわざわざインドに出掛け、当時北京で予定されていた20カ国・地域(G20)のサミットと、10月にインドで開催予定の新興5カ国(BRICS)首脳会議において、インド側から南シナ海の問題を持ち出さないようにくぎを刺したとインドの一部のマスコミが報道した。その見返りにインドの原子力供給国グループ(NSG)入会に対して中国も態度を変更する可能性を示唆したとされている。インドがそれに応じたかは明確ではないが、モディ首相がG20首脳会議に出席する途中、ベトナムに寄り、多額の軍事援助と軍人の訓練も含め、防衛関係の協定を結んだことは最も健全な行為であり、また中国が理解しやすいメッセージでもあったと言える。
フィリピンのドゥテルテ大統領の自由奔放な言動も気になる。特に大統領就任前の言動と、就任後の言動に大きな変化が生じており、間違えれば北朝鮮、パキスタンに続いて中国の第三の強力な協力者に変身する可能性もある。
私はインドと日本が八方美人的に全ての国に良い顔をするよりも、民主主義と自由を尊ぶアジアの国々の連帯を強め、真のアジアの平和と安全を確保するための自然かつ地政学的な条件から、インドと日本がより積極的に手を携えアジアのために奮闘する必要があると確信している。