日本の憲法改正を支持する時

オバマ外交と次期米大統領の課題(中)

米ペパーダイン大学教授 R・カウフマン氏に聞く

不安定化するアジアの安全保障環境をどう見る。

R・カウフマン氏

 第2次世界大戦以降、特にトルーマン、レーガン両元大統領の下でそうだったが、米国は世界の主要なパワーセンターである東アジア、中東、欧州で、潜在的な覇権主義体制に対して強力な軍事、経済、政治的抑止力を維持することを前提としてきた。米国がいなければ、覇権主義体制が支配的地位を占め、これらの地域や米国の重大な利益に害をもたらすことになるからだ。

 21世紀のアジアは、16~20世紀までの欧州のように世界で最も重要な地域だ。一つの国家がこの地域を支配するなら、その国家は全世界を支配することになる。従って、一つの敵対的国家が東アジアを支配することを抑止することが米国の目標だった。

 現在、東アジアを支配する可能性がある最大の脅威は、独裁主義的、軍国主義的、好戦的傾向を強める中国だ。だが、中国は米海軍が西太平洋で活動するのを困難にする強力な接近阻止能力を増強する中、オバマ大統領は国防予算を急激に削減してしまった。わずか220隻の水上艦艇でどうやって中国を抑止しようというのか。

 中国はいずれ、独裁維持を望む共産党と改革の必要性の狭間で危機に直面するだろう。その時、われわれはどうやって中国が拡張に走るのを阻止し、改革に進ませることができるのか。

 第2次世界大戦以降の米外交の伝統を放棄し、中国が武力侵略に踏み切るハードルを引き下げてしまったオバマ外交は、無分別としか言いようがない。

米国の強力なプレゼンスがアジア安定に不可欠だ。

 中国に対するバランスを保つために、アジアは米国を必要としている。日本も韓国もインドもこのことを理解している。唯一理解していないのは、(米大統領選で共和党の指名獲得を確実にしている)ドナルド・トランプ氏を含む多くの米国人だ。米国がいなくても日本やインドだけで対中バランスを取れるという考え方は、大きな危険を招くレシピだ。

 トランプ氏は日米・米韓同盟から米国は利益を得ていないと述べたが、これは危険なほどナンセンスだ。日米同盟は第2次世界大戦以降、米国にとって太平洋の要であり、今なおそうあり続けている。米国は価値観を共有する日本を同盟国に持つことで莫大な利益を得ている。

 すべての責任ある指導者は、①アジアの重要性②アジアの民主的な同盟国、とりわけ日本の重要性③拡大する中国の危険性――を理解しなければならない。武力侵略のハードルを引き下げるのではなく、引き上げる戦略環境を確保する上で、アジアにおける米国の役割が極めて重要であることを理解する米大統領が必要だ。

日本の役割をどう見る。

 自由を信奉する民主主義国家で、近隣諸国に対しても礼儀正しい日本が再軍備に進むことを米国が恐れる理由はない。むしろ、中国の問題を考えると、日本の再軍備はメリットの方がはるかに多い。

 日本を憲法で縛ることは時代錯誤に見える。日本が憲法の制約を取り除こうとするのを阻害するのではなく、歓迎する時が来た。日本と米国の国益は21世紀の最も重要な地政学的地域でほぼ一致しており、われわれは日本を大国として受け入れる時だ。

(聞き手=ワシントン・早川俊行)