拉致事件の解決を期待

 北朝鮮に拉致された日本人が全員日本に帰国する日は来るのだろうか。
 平成14(2002)年9月17日、初の日朝首脳会談で日本人拉致を北朝鮮が公式に認め、5人の拉致被害者が北朝鮮から帰国した。あれから13年が過ぎた。

 拉致事件は北朝鮮による日本国民の生命と安全を脅かす重大犯罪であり、国家に対するテロ行為と同じだ。

 安倍晋三政権は歴代政権の中でも、拉致事件に対して最も一生懸命に取り組んできているが、解決の糸口はまったく見えてこない。

 日本政府は韓国に亡命した北朝鮮の工作員、大韓航空機爆破事件の金賢姫(キム・ヒョンヒ)、日航機「よど号」乗っ取り犯グループの元妻の証言等により、北朝鮮による日本人拉致の疑いが濃厚になってからも、日朝国交正常化交渉の障害になるということで、拉致事件の解決に積極的には取り組んでこなかった。

 本来、北朝鮮が日本人拉致を認める前であっても、様々な状況証拠や証言により、拉致をされたことは疑いのないことであった。

 裏を返せば、日本という国家が「自国の国民の生命・財産・人権・自由を守る責任」を放棄してきたともいえる。

 同じようなことが米国人を襲ったとしたら、米国政府はただちに軍の特殊部隊を送り、自国民を奪還しようとするだろう。

 当時13歳であった横田めぐみさんや、23歳であった有本恵子さんは海外旅行で危険な地域に行って誘拐されたわけではない。北朝鮮に侵入してゲリラ活動をしていたわけでもない。

 横田さんは普通の中学生として国内で平穏に暮らしていたところを無理矢理、船に乗せられ連れ去られた。有本さんは海外に留学していたところを騙して拉致されたのである。

 昭和53(1978)年、北朝鮮によって自国民4人(うち2人はのちに自力で脱出に成功)が拉致されたレバノンでは、あらゆる手段を使い拉致から1年4カ月後に残り2人を取り戻している。

 来年こそは拉致事件の解決に向けての前進を期待したい。

 (濱口 和久)