一日も早い辺野古移設実現に努めよ
石井啓一国土交通相は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に関し、翁長雄志知事による辺野古の埋め立て承認取り消しの執行停止を決めた。これで知事決定は一時的に無効となり、防衛省沖縄防衛局は作業を再開する。
普天間飛行場の危険性除去のため、政府は一日も早い辺野古移設の実現に努めるべきだ。
国と沖縄が法廷闘争へ
沖縄県は執行停止に対して国地方係争処理委員会に不服審査を申し立てる方針だ。国交相は翁長知事に取り消し処分を是正するよう勧告し、知事が応じなければ、国が知事に代わって埋め立てを承認する「代執行」に向けた訴訟手続きに入る。国と沖縄県の対立が法廷に持ち込まれるのは避けられない状況だ。
政府は1995年にも、大田昌秀知事(当時)が米軍用地の強制使用に必要な代理署名手続きを拒否したことを受け、橋本龍太郎首相(同)が代理署名を代執行した。この時は、政府の勧告から約半年後に高裁で県が敗訴、代執行に至った。
普天間飛行場は住宅密集地に立地し、「世界一危険な米軍基地」と言われる。早期の返還が求められているにもかかわらず、翁長知事が辺野古移設を妨害することは容認できない。
普天間の危険性除去と在沖縄米軍の抑止力維持を両立させる上で、辺野古移設は最も現実的な選択だと言える。かつては辺野古移設を支持していた翁長知事も、本当はそのことを分かっているのではないか。
翁長知事は、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選でいずれも移設反対派の候補が勝利したことを自身の主張のよりどころとしている。しかし、最近の言動が本当に県の民意を反映しているのか疑わしい。
埋め立て承認取り消しをめぐっては、普天間飛行場のある宜野湾市の市民12人が今月、同飛行場が固定化され市民の生存権が脅かされるとして、県と翁長知事に対し、取り消しの無効確認と1人当たり1000万円の損害賠償を求めた。原告団長は承認取り消しについて「行政の職務の放棄であり、危険性除去の不作為でしかない」と訴えている。
さらに先月、国連人権理事会で辺野古移設反対の発言をする中で「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と述べた。しかし、移設賛成派で名護市在住の我那覇真子さんに「私たちは世界最高水準の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受している」と反論された。
政府は、辺野古移設を条件付きで容認している名護市3地区に地域振興関連費を直接支出する方針を伝えた。移設に反対する稲嶺進市長の就任後、名護市は再編交付金の受け取りを拒否しているためだが、移設反対の主張が地域振興の妨げになっているとすれば問題だ。
知事は受け入れ検討を
我那覇さんは、翁長知事への反論の中で中国の脅威についても強調した。
翁長知事はこうした声を重く受け止めなければならない。これ以上辺野古移設を引き延ばすのではなく、受け入れを検討すべきだ。
(10月28日付社説)