「イスラム国」への攻撃 「シリア」で合意し集中作戦を
2015 世界はどう動く 識者に聞く(16)
アルアハラム政治戦略研究所研究員 モハメド・ファイエズ氏(下)
――イスラム諸国は、いかにして、イスラム国からの脅威を避け、「イスラム国」を滅ぼし得るか。
イスラム国からの脅威を避ける方法はたくさんある。まず重要なのは、それぞれの国家が、お互い強くなることだ。どうしてイスラム国が主にシリアとイラクで行動しているのか。それはそれらの国がとても弱いからで、彼らはエジプトでは働けない、なぜなら、国家がとても強いからだ。サウジアラビアも同様、国家がまだ強い。だから第一条件は、国家を強くすることだ。
私が思うに、中東地域においては、サウジやエジプト、ヨルダンがお互い協力し合い、シリアを危機から救い、イラクをもまた助けアフガニスタンも助けるべきだ。
イスラム国は今後、アフガニスタンに焦点を当てると思う。アフガニスタンはイスラム国にとって、とても重要だ。なぜなら、ここにはアルカイダとタリバンがいる。彼らは、より強くなるためにイスラム国を助けると思う。
――イランはイスラム国に対してどう考えているのか。イランの戦略は?
イランは今日、イスラム国を打倒することにはっきりと関心を持っている。
イランは今まで、イスラム国支援に関心を持っていた。シリアとイラクでの出現は、米国をしてシリア政権を攻撃することを困難にしたからだ。
しかし米国がイスラム国打倒を優先すれば、シリア政権との共通の敵を持つことになる。イランはイスラム国を攻撃することによってシリア政権を守ると共に、米国と協調できる。
米国はシリア政権との協力を必要としており、イランがイスラム国打倒に動くことを期待している。ただ、イランとシリアは、短期的にはイスラム国打倒に踏み出すことはないと思う。米国の出方を見て判断するものとみられる。
――欧州連合(EU)はイスラム国壊滅に向けどうすべきか。
私は、欧州連合(EU)はシリア危機に対する彼らの政策を再考することが最初にやるべきステップだと思う。彼らのシリアでのゴールを定めるべきだ。もし彼らがイスラム国打倒とアサド政権打倒を二つとも実現したいのなら、これは難しい。二つの目標は異なっているからだ。もし彼らがシリア国家を維持しイスラム国打倒を優先したいなら、シリアの政治的解決を推し進め、危機を脱すべきだ。少なくともアサド政権を受け入れ、未来のロードマップを、別の政権からではなく、アサド政権からスタートさせるべきだ。その後イスラム国を破壊すべきだ。
EUは、アサド政権の存続を受け入れるべきだと思う。EUと米国は同様の利益を共有しており、米国の決断がより重要だと思う。 アサド政権とイラン、ロシア、中国、米国、EUが同じテーブルに集まり、将来についてのロードマップを決めるべきだ。アラブの春以降のアサド政権を受け入れねばならないということだ。この2年間で彼らは何を達成したのか。このアラブの春は、米国とEUとカタールによってバックアップされたが、何も達成していない。
しかしながら、エジプトの場合は、西側や他の国家によってバックアップされたわけではなく、国民によってバックアップされ、成功した。
我々は強い国家を持たねばならない、ということだ。だから、国家は非常に重要だ。だからシリアの人々は他のアラブ諸国から助けを得なければならない。民主主義国家に導くための政権交代は必要ではない。政変は目標そのものではないのだ。
(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)