イスラム教育 他宗教との共存認識を

2015 世界はどう動く 識者に聞く(13)

エジプト改革と発展党党首 アンワール・サダト氏(上)

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モハメド・アンワール・エスマット・サダト サダト元エジプト大統領の甥。ムバラク政権下で、人民議会副議長。アラブの春の影響を受けた2011年1月25日革命後の人民議会選挙でモノフェイヤ県から出馬。当選。エジプト外務委員会委員として活躍。現在、改革と発展党党首。

 ――アラブの春の帰結は、どうなると思うか。

 エジプトでアラブの春の理想が実現する大きなチャンスが来ている。勿論我々は少々ペースが遅いのだが、着実に進展している。だから、エジプトはチュニジアと同じような成功例となるだろう。

 しかし、シリアとリビア、イエメンは、もっと時間が必要だと思う。それぞれの国はとても複雑で、我々すべてのアラブ諸国は、これらの国家を支援する道を見つけなければならない。現在のような、戦いが進行する状態にしておくことはできない。隣国たちが支援すべきだ。

 ――シシ大統領はエジプトを民主主義国家に導けると思うか。

 エジプトにおける大きな挑戦は、いかにして安定した体制を確立するかにある。最も重要なことの一つは、議会選挙が3月に行われることだ。もしそれが公明正大に行われれば、エジプトは大きな進展を達成することになる。この国家に必要なものは、強いシステムであって、強い大統領ではない。

 ――政党政治が民主主義の基本と思うが、シシ大統領はどうして政党を創らないのか。

 シシ大統領の場合、国民全体からの支持があると認識しているからだろう。今は例外の時なのだ。私はシシ氏が政党を創ることを期待していない。

 ――現在中東は、大きく分けて、イスラム過激派グループと穏健派グループに分立されて、互いに争っているが、イスラム教徒の教育責任は、スンニ派の総本山アズハルにあるのではないか。

 イスラム教は今日、いくつかの過ちを犯すことにより、大きな問題を抱えている。パリで最近発生した攻撃などに対し、我々は皆申し訳ないと思っている。毎日、どこかで、イスラムを恐ろしいもの、悪いものと見せている。現在最もやらなければならない重要なことは、ヨーロッパやアメリカなど全ての人々に、宗教は皆、平和や友情、愛を強調しているという正しいメッセージを与えなければならないということだ。他の宗教と共存すべきだということだ。

 イスラム教徒とキリスト教徒、ユダヤ教徒など主要な宗教間で、あるいは文明間で、信頼を取り戻すことだ。このことは全ての人の努力を要求する。

 この暴力と聖戦方式を変え、終わらせねばならない。神は決して(彼らのテロ行動に)感謝していないし、ムハンマド預言者も、この暴力を依頼してはいない。

 ――エジプトのムスリム同胞団の支持を背景にモルシ氏が政権を取った後、イスラム法施行とイスラム国家創建に固執したがムスリム同胞団は過激派だと思うか。

 ムスリム同胞団は、過激主義者や聖戦主義者なのか、そうでないのかを言うことはできない。彼らはある信仰を持っている。暴力的な時もあるが、例えばイスラム国(IS)のような組織ではない。しかしムスリム同胞団はエジプトにおいて、とんでもない過ちを犯した。私は、彼らが友好的になって再び戻ってくる道を見つける機会があると思う。

 イスラム国の暴力はイスラムのイメージを著しくダウンさせている。私は、フランスやアメリカなどで命を落とした人々全員に対し、またその人々の家族に対し、とても申し訳ないと感じている。

 過激主義者らを正しく教育する責任はイスラム指導者にあるというあなたの意見は正しい。人々に正しいイスラム、穏健なイスラムを教える責任がある。そしてその最終責任はアズハルにある。大学や学校、家庭、メディアに対し、キャンペーンを張り、正しい信仰に導く必要がある。

 アズハルだけでなく、全ての機関が、若い世代が正しいイスラムを理解できるように協力すべきだ。

(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)