民主党代表選、衆院選結果を踏まえた選択を
民主党の代表選挙がきょう告示される。衆院選挙で海江田万里代表が落選し辞意表明したのを受けたものだ。立候補する岡田克也元代表、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚生労働相は信頼を喪失した同党の再建にどう取り組むのか、建設的な論戦を交わしてほしい。
国家観欠如は変わらず
民主党の下野から2年。この間、海江田執行部の下で党再建のための議論を積み重ね、2012年衆院選挙敗北の検証や党綱領決定、党青年委員会による「公開大反省会」、党改革創生会議報告などを受けて改革を進めてきた。
その一環として行われた規約改正に基づき今回の代表選挙は新たなルールで行われ、国会議員票よりも党員・党サポーター票の比重が増す。衆院解散・総選挙を予想しなかった民主党で新規約による代表選がこの時期に行われるのは想定外だろうが、党内組織票がどのように影響するかも焦点だ。
政権交代可能な二大政党制確立のために小選挙区制を衆院に取り入れた結果、自民党、民主党ともそれぞれ政権獲得、野党転落を経験した。政権与党になるには幅広く票を集める必要がある一方、下野すると固定した支持層である党員ら支援者の影響が強くなる傾向がある。
例えば、自民党は憲法改正案をまとめるなど保守路線を強化して政権復帰を果たした。民主党は党再建論議の過程で、最大支持基盤の労組・連合はじめ市民団体などの意向を取り入れてきた。13年2月に決定した党綱領では、党の立場を「生活者」「納税者」「消費者」「働く者」に置き、「政治改革、行財政改革、地域主権改革、統治機構改革、規制改革など政治・社会の変革に取り組む」とした。
また、昨年7月の党改革創生会議報告は「党のカラーは穏健中道」とするのをはじめ、地域重視や女性重視を打ち出していた。しかし国家観の欠如は明らかで、外交・安全保障などに政権時代と変わらず不安を残すものだ。
この点を自民党から突かれ、他方で「消費者」の立場に立つと言いながら政権時代に消費税増税を決定した張本人として共産党から批判されるなど矛盾する。それは衆院選の結果に表れたと言えよう。これを直視した党再建論を代表選で戦わせるべきだ。
「第三極」の日本維新の会が分裂し、みんなの党が消滅して宙に浮いた票が比例区で700万はあると考えられる。それにもかかわらず、民主党の得票数は比例区で10万程度増えたに過ぎず受け皿になっていない。離党者続出で逃げた票も戻っていない。海江田氏落選も宜(むべ)なるかなである。
大きくまとめる指導力を
民主党はもともと労組再編による連合発足に伴い、総評の支援を受けた社会党と同盟に支持された民社党の合流を起爆剤として発足した。
これに新党さきがけが加わったのをはじめ、自由党との合併に至る03年までの保守系政治家の参加があって政権獲得が視野に入った。大きくまとめる指導力は誰にあるのかが代表選の争点になる。
(1月7日付社説)