地方創生元年、夢のあるアイデアを募れ
「地方創生」は今年のわが国の大きなテーマの一つである。昨年の臨時国会会期末に地方創生関連2法を成立させた政府は、今後5年間の総合戦略や50年後の人口1億人維持を目標とする長期ビジョンを策定した。今年は地方創生元年と位置付けられよう。
新しい日本をつくる
人口減少、地方経済の低迷、自治体消滅の危機、「アベノミクス」の波及など、さまざまな問題が地方創生というテーマに集約されたと言える。地方創生は日本の再生に直結する。
昨年5月、民間のシンクタンク「日本創成会議」が、2040年までに全国の約半数の896の自治体で若年女性が半分以下に減り、急激な人口減によって将来消滅するかもしれないという衝撃的な予測を発表した。こうした予測などがきっかけとなって、地方創生が大きな課題として浮上した。
この背景には、地方創生をやらないと日本の未来はないという危機感がある。一方、東京や中部、関西の都市部に集中した戦後の経済発展の中で忘れられた地方の魅力にもう一度目を向けるという側面があることも忘れてはならない。悲壮感よりも、眠っていた地方の可能性を引き出し、新しい日本をつくるという創造的な動機付けを大切にしたい。
政府は昨年末に閣議決定した3・5兆円規模の経済対策に、地方の人口減少対策や活性化を支援する1700億円の交付金を設けた。地方自治体は今後、地方版総合戦略を策定するが、将来その地方で暮らし、結婚して子育てをする若い世代からのアイデアを取り入れることを期待したい。
戦後の第2次、第3次産業を中心にした経済発展の中で育った古い世代とは違い、自然との関わりを持つ農林水産業など第1次産業に対して新しい見方ができる。農業や水産業が食品加工や流通・販売をも行う「6次産業化」を担うのもこの世代が中心となるだろう。
日本の地方は自然や風土が一様でないこと、さらに徳川幕藩体制のもとで特産物が生まれるなど、地方ごとに特色がある。それを生かした斬新なアイデアを出してほしい。
東京から地方への移住を希望する人も少なくない。また、多くの若い人が結婚して2人以上子供を産みたいと考えている。こうした希望を叶(かな)えるには、地方の産業の活性化が不可欠だ。「ひと」と「しごと」の好循環が生まれる鍵がそこにある。政府の総合戦略では20年までに地方で計30万人分の若者の雇用を生み出す目標を掲げた。
また政府・与党は昨年末、本社機能を地方に移転した企業への優遇税制措置を取る方針を決めた。コマツやYKKなどがその先例としてあったが、後に続く企業がなかった。税制改正でこの動きに弾みを付けたい。
政府機能の地方移転も
それとともに政府機能の地方移転も具体的に進めるべきだ。本来は霞が関が率先してなすことである。
省庁の一部が移るだけでも、その波及効果には大きいものがあるし、国民の意識に与える影響は強いはずだ。
(1月6日付社説)