島嶼防衛で水陸両用作戦能力を高めよ


 防衛省は2015年度予算案に盛り込む防衛費について、14年度比で約2%増の約4兆9800億円とする方向で最終調整に入った。防衛費は3年連続のプラスで、過去最高額となる。

 とりわけ島嶼(とうしょ)防衛力を高めるため、水陸両用車AAV7や新型輸送機MV22オスプレイ、無人偵察機グローバルホーク、新型哨戒機などを導入するという。安倍晋三政権が進める南西地域の防衛強化の一環である。

中国の海洋進出に対処

 防衛費は02年度の4兆9557億円をピークに減少傾向が続いていたが、12年の第2次安倍政権発足を受け、13年度から増加に転じた。

 日本は四方を海に囲まれ、多くの島嶼から成り立つ地理的特性から、安全保障には本土のみならず、島嶼の防衛が必須要件である。国際法を無視した中国の海洋進出に対処する意思表示としても、島嶼防衛強化は歓迎すべきことである。

 滞空型無人機、オスプレイ、水陸両用車は13年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画の別表で、それぞれ3機、17機、52両の調達が明記されている。

 陸上自衛隊は島嶼部での作戦を想定した日米共同訓練を今月19日から7週間、米西海岸で行う。陸自から約270人、米海兵隊からは約500人が参加する。こうした訓練では初めて、陸上自衛官が米海兵隊所有のAAV7に乗り込む。

 AAV7は全長約8㍍、重さ約22㌧で、最大24人を運べる。18年度までに離島防衛・奪還作戦を目的として新設される陸自の「水陸機動団」の中核となる。水陸機動団は米海兵隊がモデルとされる。

 日米共同訓練はそれに備えた戦力化の訓練である。AAV7は海上では船舶のように航行し、そのまま上陸して走行することができる。15年度は30両を調達する予定だ。

 中谷元防衛相は年頭の辞で、沖縄県・尖閣諸島周辺海域での中国艦艇航行に警戒感を示した。昨年11月の安倍首相と習近平国家主席との日中首脳会談後も、中国公船は尖閣周辺の領海侵入を繰り返している。昨年一年間では32回確認された。

 中谷防衛相は、中国軍は不測の事態を招きかねない行為を繰り返しており、極めて危険な状態だ、とも指摘した。中国軍による射撃管制用レーダー照射や中国軍機による度重なる異常接近など、海洋における数々の挑発行動を指したものだ。

 島嶼部の防衛に当たっては、防衛省は「平素からの部隊配置」「実力部隊の緊急的かつ急速な機動展開」「水陸両用部隊による奪回」の三つの段階が重要だとしている。

 平時においては、常に継続的な情報収集・警戒監視の強化を怠ることなく、危機時に万一島嶼が占領された場合は、速やかに第2、第3の段階での作戦を展開できるよう、本格的な水陸両用作戦能力を高めておくことが緊要である。

平時から本気度示せ

 とりわけ第2、第3の段階に備えての共同訓練は重要である。いずれにせよ、予算増額のみならず平時からの島嶼防衛の本気度を見せることが、中国に対する抑止力になる。

(1月8日付社説)