対立乗り越え温暖化対策を前進させたい
今年は地球温暖化対策で重要な年となる。2020年以降の新たな国際枠組みの交渉が正念場を迎えるためだ。
各国は今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で新枠組みに合意する予定である。先進国と途上国の対立を乗り越え、対策を前進させたい。
新枠組み合意可能か懸念
現行の枠組みである京都議定書は、先進国だけに温室効果ガスの削減義務を課している。各国は温暖化の進行を抑えるため、途上国を含めた全ての国が参加する新たな枠組みの構築を目指している。
温暖化対策をめぐって、温室ガス増加の責任が先進国にあると主張する途上国側は、先進国に重い責任を負わせたい考え。これに対し、先進国側は京都議定書のような先進国と途上国の負担の分け方には反対している。南米ペルー・リマで昨年12月に開かれたCOP20でも、資金支援や責任分担に関して先進国と途上国が対立する構図に変化はなかった。このままではCOP21で新たな枠組みに合意できるか懸念される。
昨年11月に公表された国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第5次統合報告書は、温室ガスの排出が続けば人類や生態系に後戻りできない影響が及ぶ可能性があると警鐘を鳴らしている。COP20では、南太平洋の島嶼(とうしょ)国から海面上昇を懸念する切実な声が相次いだ。先進国と途上国はともに危機感を強め、対立克服に尽力する必要がある。
COP20に先立ち、欧州連合(EU)は「30年までに1990年比40%削減」、米国は「25年までに05年比26~28%削減」、中国は「30年ごろまでに総排出量をピークにする」との方針をそれぞれ打ち出した。
京都議定書は、世界最大の排出国となった中国をはじめとする途上国に削減義務がなく、排出量第2位の米国も01年に離脱した。二大排出国の米中が削減に前向きな姿勢を打ち出したのは、今後の国際交渉で有利な立場を確保する狙いがあろう。
しかし、COP20では各国の目標の妥当性を検証する仕組みづくりを目指したものの、中国など途上国が目標の変更につながると警戒感を示したため見送られた。途上国への配慮は必要だが、新たな枠組みの実効性が損なわれることがあってはならない。
特に中国の目標は「30年までは排出量を増やす」と宣言しているようなものだ。IPCC報告書は排出量を50年までに10年比40~70%削減することを求めている。この目標が適切だとは思えない。
原発安全審査の効率化を
日本は原子力発電など電源別の具体的な比率が決まっていないため、20年以降の削減目標を示せていない。
排出量がゼロの原発や再生可能エネルギーをどのような構成で使っていくかは、温暖化対策を左右する。経済産業省は今年夏までに定める予定だが、原子力関連の技術・人材の維持も念頭に適切な構成にすべきだ。原発再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査の効率化も求められる。
(1月9日付社説)