米・キューバ、オバマ政権は政治改革求めよ


 米国とキューバが1961年以来断絶している国交の正常化に向け足並みをそろえ始めた。

 東西冷戦の残滓(ざんし)としての数少ない社会主義国で共産党一党独裁体制が続くキューバが、米国と価値観を共有する国家に変身すれば、国交正常化は成功ということになる。オバマ政権は政治改革をキューバに求めていかなければならない。

 独裁続けるカストロ兄弟

 オバマ米大統領は、62年以来の対キューバ全面制裁処置を解除する必要性を強調した。米国は数カ月以内にキューバの首都ハバナに大使館を開設する。キューバへの輸出や投資、渡航などの制限も緩和する。

 キューバでは、同国で禁固刑を受け5年間投獄されていた米国人受刑者が釈放された。ラウル・カストロ国家評議会議議長はオバマ大統領に「敬意と感謝」の意を表明し、早期の制裁解除への期待感を寄せる一方、外交関係の修復後も「社会主義政策を続ける」と述べ、現行の政治体制の堅持を強調した。

 同国では59年の革命以来、ラウル氏の兄のフィデル・カストロ氏が半世紀にわたって共産党一党独裁体制を率いてきた。米ソが核戦争の一歩手前にまで至った62年のキューバ危機は世界を震撼(しんかん)させた。

 米国にとってキューバとの国交正常化は、裏庭に当たる中南米の安定化を図る上で好都合だとの主張に異議を挟むものではない。キューバは米国のフロリダ半島から200㌔ほどの所に位置し、地理的に極めて近い。ただ、キューバが米国との関係改善を模索する背景を確認することは、今後の交渉を見極める上で重要である。

 キューバとしては、これまで革命の同志としてカストロ政権の後ろ盾となってきたばかりでなく、石油輸出に便宜を図っていたベネズエラのチャベス大統領が昨年、死去したことが大きいと言わざるを得ない。

 かつてキューバと蜜月時代を築いたソ連は、崩壊前のゴルバチョフ時代にキューバ離れをしている。それ以降キューバは、南米左翼政権や中国との関係を深めざるを得なかった。革命の輸出への意気込みと経済の将来には暗雲が漂っていた。

 ベネズエラは石油産業の不振や原油価格の下落などで、もはや安い原油を供給してキューバを助けられない状況下にある。キューバは医療などソフト面でベネズエラを助けてきた実績があり、米国としては南米左翼政権対策として、こうした関係の清算を強く求めることになる。

 オバマ政権はあと2年で2期目の任期を終了する。一般的に米大統領は任期満了が近づくと、レガシー(政治的遺産)を求めて成果を焦りがちになる。だが内政では、米国初の国民皆保険を目指す医療保険改革法(オバマケア)に国民の多くが反対している。外交でも、ロシアによるウクライナ南部クリミアの編入に成すすべもなく、中東の過激組織「イスラム国」に手を焼いている。

 国交交渉で功を焦るな

 このままでは、オバマ政権はレガシーをつくれる状況にないと言える。だからと言ってキューバとの国交正常化交渉で功を焦ってはならない。

(12月22日け社説)