高浜原発「合格」、再稼働へ向け粛々と準備を


 原発再稼働の前提となる新規制基準の適合性審査で、原子力規制委員会は関西電力高浜原発3、4号機(福井県)について「新基準を満たす」とする審査書案を了承した。別の必要書類の提出や地元同意などを経て、来春以降には発電再開が実現する見通しだ。再稼働へ向け粛々と準備が進むことを期待する。

規制委審査にも注文

 事実上の合格証となる審査書案の取りまとめは、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に次いで2例目。関電は、高浜原発の安全確保のため、想定する地震の揺れ(基準地震動)を550ガル、敷地に到達する津波の最大高さを2・6㍍として申請した。しかし、規制委から敷地付近の三つの活断層が連動する可能性を考慮するよう求められ、700ガルに引き上げた。

 津波についても、地震に伴う地滑りや地盤沈下の影響などに備えた。8月に想定の計算でミスが発覚し、防潮堤を約2㍍かさ上げする必要に迫られたが、最終的に津波の高さを最大6・5㍍程度とした。従来は検討の対象外だった竜巻など他の災害も考慮したのが認められた。

 川内1、2号機では審査書案作成に人員を集中投入する「優先審査」方式を採ったが、高浜3、4号機は従来の審査チームが担当した。規制委の田中俊一委員長は「審査は効率化されている」と評価し、地震想定などが固まった他の原発についても「相当議論が煮詰まっており、そう遅くない時点に結論が出ると思う」との見通しを示した。

 ただ、注文もつけたい。田中委員長は今回、安全審査の申請から1年半近くかかったことについて「(事業者側に)従来の安全対策で十分という意識から抜け切れないところがあり、具体的な対応まで時間がかかった」と説明し、関電の姿勢に原因があるとの考えを示した。その上で「規制はミニマム(最低限)であって、事業者はより高い安全を目指すべきだ」と一層の努力を促した。

 規制委はあくまで国の行政機関の一つだ。事業者側とのやりとりの在り方を考える前に、原子力行政の方向性と一致した作業をしてほしい。もちろん規制委には独立性が求められるが、原子力の平和利用などを担う原子力委員会との連携も必要だ。

 原発の再稼働は、エネルギーの安定供給や二酸化炭素の排出削減を確かなものにするために欠かせない手段である。

 東日本大震災後、停止した原発を代替する火力発電用の燃料費が膨れ上がり、急激な円安も相まって電力会社の経営を圧迫。電気料金の値上げが相次ぎ、家計や産業界を直撃している。このままでは景気回復の足を強く引っ張りかねない。

期待される燃料電池

 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付けて原発再稼働を進めるとともに、代替エネルギー開発にも力を入れる方向だ。水素と酸素の化学反応を利用して電気を作り、「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車が市中にお目見えする日も近い。日本の優れた技術にさらに磨きをかけたい。

 原発を活用していくには、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地選定も急がれる。

(12月23日付社説)