人口急減防ぐ処方箋、危機意識の共有からスタート

 月刊「中央公論」7月号は、6月号に続いて日本創成会議・人口減少問題検討分科会が5月に発表した2040年時点の全国市区町村別人口(推計)をもとに、日本の人口減少問題を扱っている。復興大臣政務官の小泉進次郎、宮城県女川町長の須田善明、そして同検討分科会座長の増田寛也による鼎談(ていだん)「東京通勤圏も被災地も足もとから崩れている」だ。

 総務省が25日発表した今年1月1日現在の日本人の総人口は5年連続で減少している。同検討分科会の報告書は全体の約5割の自治体が「将来消滅する可能性がある」というショッキングな内容。これについて、小泉が「今度のリストを初めて目にした時、これは『事実に目を伏せるな』というメッセージなのだ、と僕は受け取りました」と語っている。

 現実を直視し、危機意識を共有することから、人口急減を防ぐ努力は始まるという認識は正しいが、その処方箋となると、簡単ではない。「消滅可能性都市」に名を連ねた女川町の須田は「東京とは違う」地域の特徴を発揮していくという視点が重要だと指摘した。しかし、これでは町おこしレベルと同じ意識にすぎない。

 小泉は「地方自治も国政も、真の自覚と責任と、将来に対する明確なビジョンを持った人間たちで担われることになるでしょう」と語り、須田もそれに同意する。しかし、そのビジョンを言える指導者がいない。

 一方、「ある意味、民主主義が試されるんですね。負担増をどうするか、縮小を良しとするか、そういった議論になると、どうしても易きに流れがちになる」と語るのは増田。しかし、試されるのは民主主義という政治制度よりも、住民の人としての哲学や幸福感がより根源的な問題として浮上してくるのではないか。つまり、これまでのような経済優先の価値観では、都市も地方も未来は望めない。ある程度のデメリットを受け入れたとしても揺らがない人生の座標軸をどれだけ多くの人が持ち得るのか、という問題意識を持つことが求められているのだろう。

 さらに、増田は人口急減を防ぐには出生率向上が必要で、そのカギとして①子供を生み育てるだけの経済的な基盤の確保②女性の育児と就業の両立③夫の育児への参画を挙げている。こうした取り組みは必要なことではあるが、結婚や出産や子育ての喜び、意義を若い人に伝え、苦労を覚悟してでも生みたいと思う精神性の回復をどう果たすのか、ということのほうがより人口減社会の本質的な課題である。鼎談参加者たちが、この点に目が向かないことは、経済を優先する既存の価値観から抜けきっていないからなのだろう。(敬称略)

 編集委員 森田 清策